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歯列矯正慎重に



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 歯列矯正慎重に

 「見た目優先」で頭痛や肩凝りも他器官とバランス大切、信頼できる歯科医選びを

 歯並びをきれいにし、美容や健康にも効果があると言われる歯列矯正。ところが間違った矯正を受け、頭痛や肩凝りに悩むようになったという人も少なくない。「見た目優先の矯正が原因」との指摘もある。「要矯正」と言われた場合、別の歯科医にも相談するなど慎重に対処したい。

 東京中野の「歯科医療研究センター」に最近、歯列矯正の結果、体に不調を来したとの訴えが相ついでいる。

 首都圏に住むある女性(三十)の場合、十歳から八年間、歯科医で矯正を受けた。中学入学後、視力が急速に低下、常に体がだるくなり、内科で貧血気味と診断された。同センターを運営する歯科医、林晋哉さん(三四)が診ると、歯並びはきれいだったが、上下の前歯が大きくずれ、物がよくかめない状態になっていた。二十三歳で矯正を始めた別の女性(二六)は、一年後に左右のあごの関節が痛むようになり、頭痛もして不眠症に。こちらは、あごの動きを誘導するという前歯の機能が失われていた。無理な歯列矯正が原因と診断した林さんは、ワイヤを外して調整すると共に、口をなるべく閉じて生活するよう指示。すると、徐じょに頭痛は消え、あごのはれも軽減したという。

 子供の歯列矯正を決心する親の多くは「大人になってからでは遅い」と考えるようだが、埼玉県の主婦は「もう少しマイナス面も考えていたら」と、長女(十八)の歯列矯正を悔やんでいる。矯正を始めたのは小学四年。その後、長女はあごを突き出し、右肩を下げる姿勢になり、やがて吐き気や頭痛、手足の冷えを訴えるようになった。複数の大学病院で検査したが、結果はすべて異常なし。通院先の歯科医に尋ねても「矯正とは無関係」と言われた。

 矯正が終わって四年たった現在、歯並びは自然に元に戻ってしまった。多くの症状は和らいだものの、肩凝りなどは今も残るという。

 日本咀嚼学会長の窪田金次郎さん(東京医科歯科大学名誉教授)は、「歯のかみ合わせは良くも悪くも体の他の部分に影響を及ぼす。特に生まれつき歯並びの悪い人が矯正する場合、他の器官とのバランスを十分に考えた治療が大切」と話す。

 それなのに、「現在の矯正は見た目を重視しがち。成長期の子供の体への影響を無視した治療も多い」と林さん。

 正しい矯正ならかみ合わせはよくなる。そのためには信頼できる歯科医選びが課題になる。目安の一つが、約千人いる日本矯正歯科学会の認定医だ。歯科医師免許に加え、大学病院の矯正歯科で五年以上の研修経験などを条件にしている。「認定医は全身との関係を踏まえた矯正治療をしている」(同学会総務理事で新潟大学教授の花田晃治さん)という。

 厚生省も昨年秋、かむ動作が全身に及ぼす影響についての研究班を作った。今月中にも結果が報告される見込みだ。
 
 読売新聞 1997年(平成9年)4月15日(火曜日)

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