本来の歯列より小さい入れ歯

本来の歯列より小さい入れ歯には、「合わない」「外れやすい」というトラブルもよく起こります。小さいものが合わないのは当然ですし、舌の力もそれなりに強いですから、入れ歯が舌に押し出され、外れやすくなるのです。

小さい入れ歯にはこれだけの問題があります。そして、歯学部や技工士学校で教えられた方法では、小さい入れ歯が作られることなってしまうのです。

林裕之

ワルダイエル咽頭輪

喉の奥には免疫を司るワルダイエル咽頭輪という器官があります。舌を引っ込めるための筋肉は喉のまわりにありますから、そこが緊張していると、ワルダイエル咽頭輪が圧迫されたり鬱血したりして、ストレスを受けた状態になってしまう。

つまり、舌が緊張していると、免疫力が低下してしまうのです。言うまでもなく、免疫力の低下はさまざまな病気の引き金になります。風邪を引きやすくなるとか、疲れやすくなるといった症状が出るのはもちろん、生死に関わるような大病につながることすらあります。

林裕之

小さい入れ歯

こうして出来上がった「小さい入れ歯」を入れると、唇の上下が引っ込み、口をすぼめているような状態になります。正しい方法で作った入れ歯なら、口もとはふっくらしたままですから、小さい入れ歯の悪影響は、まず外見に現れるわけです。

小さい入れ歯を入れると、口の中が狭くなります。口の中が狭くなっても、舌の大きさは変わりませんから、頻繁に舌を噛むようになります。やがて、これを避けるために無意識のうちに舌を奥に引っ込めるようになります。結果、舌は常に緊張した状態になります。

林裕之

歯槽頂間線法則

入れ歯についての授業もありますが、そこでも間違ったことが教えられています。たとえば歯科大学や技工士学校で教えられている総入れ歯の作り方は、歯槽頂間線法則という方法に基づいていますが、この方法で入れ歯を作ると、その患者さん本来の歯列よりも小さい入れ歯が出来てしまいます。

歯槽頂間線法則とは、簡単に言えば、歯茎の中央の部分、つまり歯槽の頂点に歯を立てるようにして総入れ歯を作る方法です。しかし、歯が抜けると歯槽骨は痩せ細っていきます。痩せ方のパターンは決まっていて、誰でも外側から痩せていく。

この状態が進むと、歯槽頂は内側に引っ込んでいきます。つまり、歯列が小さくなるわけです。この「小さくなった歯列」を基準して作った入れ歯は、当然、その患者さん本来の歯列よりも小さなものになります。

 こうして出来上がった「小さい入れ歯」を入れると、唇の上下が引っ込み、口をすぼめているような状態になります。正しい方法で作った入れ歯なら、口もとはふっくらしたままですから、小さい入れ歯の悪影響は、まず外見に現れるわけです。

林裕之

いまだにブラックの法則に基づいた治療法

さてそれでは、使えない入れ歯が量産されているのはなぜなのでしょうか。その理由はいくつかありますが、まず言えるのは「大学で教えている入れ歯の作り方がことが間違っている」ということです。

大学の歯学部でも、歯科技工士学校でも、間違った教育が行われています。大学の歯学部で行われている授業は、ほとんどが歯の削り方に費やされます。「齲食(ウショク:虫歯)はハトの尻形に削る」とか「削る角度は六度」などといったことばかりが教えられています。

このような治療法は、発案者のG・V・ブラックの名をとって「ブラックの法則」と呼ばれていますが、1990年、FDI(国際歯科連盟)は「ブラックの法則の完全撤回」という通達を出しています。ブラックの法則は間違っているという通達、つまり歯は極力削るべきではないという通達が、20年以上も前に出されている。しかし歯科大学では、いまだにブラックの法則に基づいた治療法を教えています。

林裕之