大学病院では口が開かない

48歳(来院当時)の女性は、顎関節症で来院しました。この方は、高校一年のときに、左下の一番奥の歯がムシ歯になり、近所の歯科医院で抜いたそうです。その後放置しておくと上の歯がしだいに下がってしまい、噛み合わせが悪くなりました。

そして25歳頃から顎に違和感を覚え、数年後には寝返りが打てないほどの座骨神経痛に悩まされるようになりました。その後、30歳のときに、大学病院の口腔外科に相談して、鍼治療を月1回、20年もの間受けていました。

その他にも無添加食品で食事療法を試したり、エアロビクスをやったりなど、様々な治療法を試みていたのですが、全く改善せずに、花粉症になったり、指輪をすると湿疹ができたり、左手の中指が曲がって伸びないバネ指まで発症してしまったりと様々な症状に悩まされ続けていました。

そこで、仰向けに寝た状態で軽く開いた唇に割りばし乗せるという割りばし法を試みてもらい、体の力を抜き、ゆるみを身に付けてもらうといった噛みしめ対策と共に噛み合わせの微調整を慎重におこないました。更に平行して顎関節の動きをスムースにする簡単なトレーニングを行うとあっという間に驚くほど症状が改善したのです。

治療開始から約3ヵ月ぐらいで、大学病院の口腔外科で20年も治療を続けてもほとんど開かなかった口が、ほぼ支障なく最大まで開くようになったのです。

そして、約2年半であごの違和感が全くなくなくなりました。大学病院の口腔外科で20年はなんだったのでしょう。

「歯医者の言いなりになるな!」角川oneテーマ21新書より抜粋

「咀嚼筋マッサージ」が効果的!

噛むときの顎の動かし方は人さまざまですが、右か左のどちらか一方、ばかりで噛む、という噛み癖があると、よく使うほうの歯の疲弊が進むとともに、肩こり、首のこり、腰痛や頭痛の原因となることもあります。

噛み癖があると左右どちらかの噛む筋肉(阻噌筋)に負担がかかり疲れやすくもなります。

咀嚼筋は、咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋の4つで構成されていますが、そのうち自分で確かめる乙と、かできるのは咬筋と側頭筋です。咬筋は左右の頬に手の指を当てて奥歯を噛みしめてみると動くのでわかります。

側頭筋は頭の左右の両脇に手の指を当てて奥歯を噛みしめてみると動きます。指でマッサージをすれば、噛む筋肉がほぐれるとともに肩こりや首のこりもやわらぎます。

このマッサジはl回1分以内にして1時間おきくらいをメドに1日に10回以上こまめにやることが大切です。1回に長くやりすぎてはいけません。

「わりばし法」のすゝめ

歯や歯茎に大きなストレスがかかり、噛み合わせバランスを崩す原因となる噛みしめや、歯ぎしりを改善する方法として私がおすすめしているのが「わりばし法」です。

仰向けになり、割り箸を口に軽くはさんで約30分間、リラックスタイムを持つというものす。この方法を行うと口の周りをはじめ、全身の筋肉の緊張、がやわらいでいきます。

やり方はとても簡単です。

①わりばしを割って1本のわりばしを唇で軽くはさむようにします(噛まないように。感覚としては口にのせる感じです)。

②仰向けになり、全身の力房長くようにして、そのまま30分間過ごします。畳やカーペットの床のように硬い場所で仰向けになるとより効果的です。

体を冷やさないように毛布などをかけてもよいでしょう。終わって起き上がるときは体を十分ほぐしながらゆっくりと立ち上がります。急に立ち上がらないことです。

チューインガムのすすめ

やわらかい食べ物が大好きな「噛まない生活」を続けていれば、近い将来、まともに噛むことができない日本人ばかりとなってしまうことでしょう。

歯の健康は国の未来を左右するといってもいいすぎではないと思います。

チューインガムを人前で噛むととに抵抗を覚える人もいるようですが、私はガムを積極的に活用するべきだと考えています。大人も子どももガム(ノンシュガーのもの)を積極的に活用して「噛む生活」を実行したいものです。

子どもたちが必ず噛まなければいけない時聞を作ることも一つの方法ではないかと思います。「顎の時間」を設けて、保育園、幼稚園、小・中学校などで1日10分でもスルメや硬めのガムを噛むようにしたいものです。

ガムを噛むときは口を閉じ、左側で数回、右側で数回というように、左右の歯でバランスよく噛むようにしましょう。

脳の血液の流れ

心臓は1分間に60〜80回の収縮を繰り返して体のすみすみまで血液を送り届けています。血液が全身をまわって心臓に戻ってくることを血液循環と呼んでいますが、血液循環をよくする心臓の手助けとなる働きのことを「第二の心臓」と呼ぶことがあります。

「第二の心臓」といえば、脚のふくうはぎの働きが知られていますが、噛むことも「第二の心臓」と呼ぶのにふさわしい働きをします。

よく噛むことは脳の血液の流れをよくします。噛むと下顎にあるポンプの役目をする場所(下顎頭の少し上にある静脈叢)がよく働いて、脳に血液がよく送られるようになるからです。

よく噛むことで学習する能力が向上したという、ラットを使った実験も報告されていますし、よく噛むことで視力もよくなるという報告もあり、注目されています