歯の矯正 大人も必要?


2007年10月12日 朝日新聞朝刊のコラムから

歯科医に勧められ、歯の矯正治療を始めてみた。ところが、矯正装置を着けたままの暮らしは予想以上に不自由で、つらい。「この苦しみの先に何がある?」。自然と疑問がわく。子どもとは事情が違う大人の矯正治療。

成功したと思う人がいれば、失敗したと悔やむ人もいる。歯科医の間でも賛否両論があった。

小島泰生(朝日新聞西部本社記者)

体験したら痛み・違和感

記者(39)は子どもの頃から歯並びが悪かった。特に下は斜に傾いたり、重なり合ったりという「乱ぐい歯」。小学6年のとき、歯科医は「治らない」。ところが、昨年末、虫歯を治療してもらった歯科医は肩こりがなくなるといった効果を上げ、矯正を勧めた。数十万円の治療費は痛いが、6月から福岡市早良区の歯科医院に通い始めた。

事前に「痛いですよ」と告げられた。その治療の中身といえば__。
まず、奥歯に金属の帯を巻くため、歯間を広げる小さなゴム片を押し入れる。激しい痛さだ。次にすべての歯の表面に突起物を接着剤で付けて、弾力あるワイヤを渡してゴムや針金などで留め、圧力を加える。常に歯が浮いたような違和感。突起物がほおの粘膜を傷つけ口内炎も患った。

硬い食べ物をかむと痛むので飲み込むしかない。豆粒大の食べ物は矯正装置に引っかかる。歯磨きには4種類の歯ブラシ……….。

2、3週間に1回、ワイヤを太いものに替えていくたびに苦痛が繰り返される。2年前後治療が続くと思うと憂うつになる。ただ、歯並びが少しずつ良くなっているのは確かだ。

喜び

つらい治療に見合う効果はあるのだろうか。

「歯並びが悪いのは病気です。見た目の問題だけでは済まない」。東京都大田区で開業する歯科医師・福原達郎・昭和大名誉教授はそう断言する。5月に診た女性(40)は奥歯の4本しかかみ合っておらず、今年初めに胃がんの手術を受けていた。福原歯科医師は「ちゃんと咀嚼(そしゃく)できないため、胃にかなり負担をかけていたのだろう」と話す。

福岡市の会社員、木村登美子さん(22)は受け口気味で、歯並びとかみ合せが悪かった。

歯科矯正医院に通い始めたのは02年夏。犬歯の奥にある上下4本(注:第1小臼歯)を抜いたのですき間ができ、「矯正なんてしなきゃよかった」と後悔したが、歯が動いてすき間が埋まると「鏡を見るのが楽しくなった」。

クリスマスにはワイヤを固定するゴムの色を緑と赤に替えてもらうなど治療を楽しむ工夫も。約3年間つけた矯正装置を外すときは寂しさすら感じた。

木村さんは「友人から『すごくきれいになった』と言われてうれしい」。担当した伊藤正彦歯科医師は「性格も前向きになり、積極性が出てきた」と話す。

後悔

一方で、「大人の歯列矯正は百害あって一利なし」と言う歯科医もいる。

東京都中野区で開業している林晋哉歯科医師もその一人。「歯並びが悪くても、数十年かけてかみ合わせができている。矯正で急激に噛み合せを変えるのはかなりリスクがある」

さいたま市の歯科衛生士の女性(40)はやく15年前、当時の勤務先だった都内の有名な矯正医院で治療を始めた。7本の歯を抜き、約3年で矯正は終了。歯並びは良くなったが、肩がパンパンに腫れ、腰が痛んだ。視力も0.7から0.05に落ちた。

その後、林歯科医師に診てもらうと、奥歯が全く噛み合わず、顎関節症だと診断された。歯をわずかに削って微調整し、約1年後に症状は消えた。女性は「健康な歯を抜いてしまった。かみ合わせを考えてくれる歯科医なら別だが、大人の矯正はすべきじゃない」。

歯科医師免許を持つ元橋一郎弁護士(東京弁護士会)は「歯の根が短くなったり、矯正治療に不満を持って相談して来る人は多い。標準的な治療法がなく、様々な治療が行われているのが問題だ」と指摘する。

2007年10月12日 朝日新聞朝刊



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