問題を発見したのは、入れ歯を入れてから1年2ヵ月後も経ってからでした。その日、およそ2ヵ月ぶりに病院にやって来た父の口を見て、私は呆然となりました。
まず目についたのは、下顎前歯部の歯茎のふくらみと、そこから大量に出ている膿でした。残っていた歯は虫歯に冒されていて、これはもう抜歯せざるをえない、という状態です。2ヵ月前には問題に気づかなかったので、私は驚くより先に呆然となったのです。
こんな状態になるまで、毎日どうしていたのか。ともかく聞いてみると、下の入れ歯がきつくて合わなかったので、少し浮かして使っていた、との答えでした。父は我慢強い性質で、息子たちが作った入れ歯だからと、入れた当初からずっと不具合に耐えていたのです。
このとき、さらにもう一つ、父の体には変調が出ていました。側頭部のあたりの毛が、直径数センチにわたって抜け落ちていたのです。いわゆる円形脱毛症ですが、これも原因は「合わない入れ歯」でした。