インプラント危害、国が警告…治療中に死亡事故も「入れ歯=悪」のまやかし

筆者が歯科医となって30年、歯科の世界も筆者の歯も様変わりしました。

筆者が歯科医となって30年、歯科の世界も筆者の歯も様変わりしました。

歯学部を卒業と同時に、「噛み合わせと全身」の勉強を始め、10年後の1998年に『いい歯医者、悪い歯医者-噛み合わせが狂えば、命も危ない』(クレスト社)を著しました。

「一本の歯が人生を狂わせる」をテーマに、かみ合わせと全身の関わりや、安易に歯を削ったり、歯列矯正で歯を動かすことの怖さ、勉強不足の歯科医や歯科技工士の多い歯科業界の問題点などを訴えました。

「かみ合わせが悪いと頭痛肩こりなどの原因になる」ことは今では多くの人が知っていますが、20年前は歯科医でさえも知らない時代でしたので、この本は話題になり新聞やテレビなどでも取り上げられ、多くの人に読んでいただきました。この本の出版から、来年で20年になります。

『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」-あなたもいつか歯を失う:Kindle版』(林晋哉/パブフル)

20年の節目としてこのたび、『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」-あなたもいつか歯を失う:Kindle版』(パブフル)が 発行されました。
そこで今回、この20年で歯科の世界はどのような変化があったのか、簡単に振り返ります。

まず挙げられるのは、子どもの虫歯が減ったことです。「どうせ生え変わるのだから」と粗末に扱われていた乳歯への意識が変わり、乳児・幼児のうちから歯磨きや早めの受診、フッ素塗布などが功を奏したのでしょうか。

噛み合わせと全身の関連が一般常識となったことは前述の通りで、「顎関節症」という病名も聞きなれない言葉ではなくなりました。

インプラント(人工歯根)の登場も目立った出来事です。1980年代に出始め、2000年代に入って急速に広まりました。高齢化が進み入れ歯年齢層が厚くなり、歯科医も需要を見込んでこぞって導入しました。歯科医師過剰にあって、保険外で収入の見込める新技術に多くの歯科医が飛びついたのです。しかし、にわかインプラント医の急増は技術の未熟さや、過当競争のあおりでトラブルも多く、独立行政法人 国民生活センターが「インプラント危害」という強い言葉を使って警告を発する事態となりました。

歯科インプラント治療に係る問題-身体的トラブルを中心に-国民生活センター

また、ベテランのインプラント医によるインプラント手術中の死亡事故などが刑事事件になるなど、最近ではインプラント治療から撤退する歯科医も増え、淘汰が進みつつあるようです。

歯科治療以外では、歯科医師過剰がより深刻になってきました。歯科医院の数はコンビニの数を上回っていることも半ば常識となるほどで、特に都心部での歯科医院の過密ぶりは異常です。こうして歯科医師は余っているのに毎年2000人の国家試験合格者が輩出されています。

子どもの虫歯は減り、総人口も減ってゆくのに、歯科医師は増え続けるという超過当競争が常態化する異常な業界になってしまいました。
これらが歯科を取り巻く目立った変化ですが、残念ながら人類にとって宿願である虫歯や歯周病の特効薬や完全予防薬の開発、入れ歯やインプラントに頼らない歯の再生治療といった画期的な治療法などは誕生していません。

20年で筆者の歯はどう変わったか

歯科界には革新的な変化は現れていませんが、20年たった筆者自身の口の中は大きく変わりました。具体的には、筆者も入れ歯になりました。何本か歯を抜き、部分入れ歯を入れています。

歯医者だから歯の状態は良く、入れ歯などは患者に入れるだけで自分では入れないと思われがちですが、そんなことはまったくありません。私たちも人の子ですから、虫歯に泣き、歯周病の激痛に苦しみ、挙げ句に歯を失い、切なく情けない思いを味わいます。この20年での筆者の口の中の変化が、それらの体験を如実に物語っています。

これは決して「医者の不養生」がもたらしたものではありません。曲がりなりにも専門家ですから、自分に必要なケアはしてきました。そのお陰で適切なタイミングで抜歯をし、この程度の状態で済んでいるのだと思っています。

歯そのものの丈夫さ、歯ぐきの丈夫さは遺伝の影響も強く、歯磨きだけで防ぎ切れるものではありません。筆者の両親とも若いうちに歯を失うタイプだったので、その影響が強く、筆者が若いうちに歯を失う大きな要因だったと捉えています。だからといって、間違っても親を恨むことなどありません。むしろ、親を含めて歯で苦労する患者さんの気持ちが痛いほどわかるのです。

筆者が比較的早く歯を失うタイプであることは『いい歯医者・悪い歯医者』でも記しており、死ぬまで自分の歯でいられないことは20年前からわかっていました。そのため、それに見合ったケアはしてきましたし、抜かざるを得ない場合は入れ歯にすると決めていました。もし、遺伝などの要因を考えず、歯磨き信仰を盲信して間違ったケアをしていたら、むしろ失う歯の本数は増えていたでしょう。

歯が抜けた後の治療法にはインプラント(人工歯根)もありますが、筆者の選択肢には入っていません。これについては、前出の国民生活センターの警告で充分だと思いますが、新刊にも詳述していますので、インプラント治療を行うか迷われている方は参考にしてください。

歯の質や寿命は個人差が激しい

世間では“体質”や“家系”ということばをたびたび口にします。たとえば、風邪を引きやすい体質、アレルギー体質、糖尿病の家系、高血圧の家系などがそれで、究極は短命の家系、長寿の家系などと口にします。

「死ぬまで自分の歯」は万人の願いですが、実情はそのようなことは極めて稀です。歯の質や歯周病へのかかりやすさにも体質、家系といった遺伝的な要素が大きいのです。もちろん、すべて遺伝で決まるわけではないので、手入れの仕方や使い方も歯の寿命を大きく左右します。

要は、病気のかかりやすさや寿命は個人差が大きいということで、歯も例外ではありません。歯の寿命は、他の臓器や器官よりも個人差の激しい臓器だと思います。

歯医者で変わる歯の寿命

歯の寿命にかかわるもうひとつの大きな要因は、歯科治療です。人それぞれに備わった歯や歯周組織の質などの個人差を無視した治療を受けると、歯の寿命を縮めるばかりでなく、心身に重大な悪影響を及ぼすことがあります。予防法も個人差を無視して一律に「磨け、磨け」では科学ではありません。端的に言えば、個人差を考慮したオーダーメイドの治療や予防指導ができる歯医者にかかれば、歯の寿命を延ばすことが可能ですし、それができない歯医者にかかれば歯の寿命は短く、身体の寿命にも影響を与えます。

『いい歯医者・悪い歯医者』を世に投じてから20年。筆者自身、入れ歯を使うようになった口の変化と、それに伴う身体の変化、またさまざまな患者さんの診療を通じて「一本の歯が人生を狂わせる」ことの重大性を日々実感しつづけています。

拙著『入れ歯になった歯医者~』では、自ら入れ歯を使う歯科医として、あなたの知らない歯科治療の実情と、あなたに必要な歯科治療法、予防法などを綴りました。本書で歯と心身の健康に役立てていただければ幸いです。

文=林晋哉/歯科医師

●林 晋哉(歯科医師)
1962年東京生まれ、88年日本大学歯学部卒業、勤務医を経て94年林歯科を開業(を併設)、2014年千代田区平河町に診療所を移転。「自分が受けたい歯科治療」を追求し実践しています。著書は『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、『歯医者の言いなりになるな! 正しい歯科治療とインプラントの危険性』(新書判) 、『歯科医は今日も、やりたい放題』(三五館)など多数。

林歯科HP:httpss://www.exajp.com/hayashi/


新刊情報!​ 林歯科の新刊本(Kindle版)がリリースされました!

入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」 -あなたもいつか歯を失う- Kindle版

-内容紹介-​

入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」 -あなたもいつか歯を失う- Kindle版

  • 歯抜け歯医者が本音で語るあなたの知らない歯科医療
  • 虫歯の痛み、歯周病の痛み、抜歯の切なさを知り、自ら入れ歯を使っている歯医者が語る”体験的入れ歯論”
  • 「歯磨きよりも大切な予防法」、「歯医者で変わる歯の寿命」
  • 「噛み合わせと全身の健康」
  • 「入れ歯を笑う者はインプラントで泣く」
  • 「いい歯医者・悪い歯医者の見分け方」

などなど、知ると歯の寿命が延びる歯医者の本音を教えます。

​*Kindle / キンドルは​無料のアプリです。スマートフォン、タブレット、PCなどで簡単にダウンロードできます。こちら⬇からダウンロード出来ます。
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「歯科技工士」がいる歯科医院といない歯科医院の実態・・

%e4%b8%80%e6%9c%ac%e7%be%a9%e6%ad%af%ef%bc%91歯科医院内で歯科技工士さんが技工をしている、いわゆる院内技工の歯科医院は全国でどれくらいあるのでしょうか?ネットで検索をしてみましたがよく分かりませんでした。

 私は卒業してすぐに兄が院内で歯科技工士をしていた診療所に勤め、その後一緒に開業しましたので、現在までほぼ院内に技工士さんが居ないという経験をしたことがありません。ほぼというのは、兄が入院した時に院外技工所を利用したり、手伝いに行った歯科医院が院内歯科技工ではなかったりしたからです。

兄は技工士学校を卒業後、院内技工のある歯科医院に勤め、そのドクターが勉強熱心だったこともり、保母先生やPKトーマス先生がおられた時代の国際デンタルアカデミー(IDA)で勉強しました。その後の咬合の勉強や解剖なども何年にもわたり全て一緒にやって来ました。その甲斐あって、今では診療に関して互いへの信頼は厚く、現在ではほとんどストレスのない補綴治療を行えるようになっています。

先日、部分義歯の破折で患者さんがいらっしゃいました。落として割れたとのことで、破折部がぴったりと合わさる状態でしたので、そのまま義歯を持って技工室に行って渡しただけです。

修理には30分程度掛かりましたが、その間、他の患者さんの診療をし、修理が終わったあと、今度はそれを患者さんに渡し、入れてもらい違和感がないことや多少のチェックで終了です。もちろん修理部位は修理したことが分からないくらいの仕上がりです。ドクターの修理ではこうは行きません。また、何と言っても患者さんが「林歯科はお兄さんが技工士ですぐに対応してくれるし、しっかりと直してくれるので本当に安心出来る」と言ってくれます。

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私も兄が技工士なのでかなり技工はやらされてきました。印象も常に2つ採らされて来ました。結構面倒くさかったけれども、そのおかげで現在では印象を見れば大丈夫かどうかは分かります。また、補綴物が患者さんに合わないとすぐに技工士のせいにするドクターが非常に多いのですが、模型に補綴物が戻るのならば、患者さんに合わないのはドクターの責任であることは身にしみています。

技工を正確なものとするのは、印象してすぐに石膏を注ぐ、石膏の混水比は正しく守る、石膏を硬化させるときは湿箱に必ず入れる、金属は熱処理をする。(金属は熱処理をしてはじめて金属特性をもつ補綴物となり、熱処理をしなければただの鋳物でしかない。)など極々基本的な守るべき事柄をおろそかにしないことが必須です。この上に技工技術や材料の吟味など他のたくさんの要素が関わってきます。

補綴物は、「人工臓器」です。こだわって携わるものです。しかしながら私の知っている限りでは、守るべき基本的事柄さえ守っていない歯科医師の何と多いことか。

いつも、院内に信頼に足る歯科技工士さんの居ない歯科医院は、どうやって診療しているのだろうと思ってしまいます。

林歯科・
https://www.exajp.com/hayashi/


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インプラント治療の潮目

先日もルートの歯科材料を届けてくれる古くから知り合いのAさんが、こんな記事がありましたよと朝日の記事のコピーを見せてくれました。読売にも載っていたそうです。

『インプラント事故5年で300件 厚労省研究班調べ』朝日新聞(6/13付)。週刊文春にもインプラントの歯周炎の深刻さを取り上げた記事が載っていました。そして、インプラントに対して慎重な編集姿勢を取ってきた歯科の業界誌「アポロニア21」も5月号と6月号でインプラントの実際を特集しています。

その特集を組む理由に”テレビ報道などでインプラントに対する風当たりが強く”とか”インプラントバッシング”などの表現がありますが、何を的外れな認識かと呆れてしまいます。

今まで隠れていたインプラントのリスクや失敗例の多さ、その被害の深刻さが表面化したからこそ、消費者センターの警告やNHKや新聞、ラジオなどの報道で事態の深刻さを知らしめているだけの事。

それでも、インプラント医の本音などもあり、良心的な内容で時代の変化を感じさせる特集です。インプラント医は総じてかなり慎重に取り組んでいることも読み取れます。

インプラント治療には潮目が来ており、明らかに今までとは違った潮流になると思います。こうした変化はじわじわきてある日大きく動き出します。今がまさにその潮目です。

まあ、相変わらず「きちんとした診断さえしていれば失敗はない」などと豪語するインプラント妄信のオカシな歯医者もいますが、遠からず淘汰されると思います。

アポロニア21 (日本歯科新聞社)以下引用です。

昨今、テレビ報道などでインプラントに対する風当たりが強くなっています。これは日本だけの特殊事情ではなく、インプラント周囲炎の有病率の高さは国際的な問題となってきています。ただし、特に日本でインプラントバッシングのような状態が起きている背景には、患者さんに過剰な期待を抱かせたり、半ば強引に誘引したりするなど、これまで歯科医院側の対応に大きな問題があったと見られています。

本誌は、インプラントに対して慎重な編集姿勢を取ってきましたが、急速に社会に広がるインプラントバッシングが、歯科医療そのものへの不信感につながる可能性があると考え、あえて今後のインプラントがどのような方向を目指すべきなのかについて、2回に分けて特集することにしました。

2012年5月号
■12人の開業医に聞く「メリット・デメリット」「自院の対応」
■トラブル回避のためのリスク説明
■歯科医師免許を持つ弁護士からの提言

2012年6月号
■「医療事故」「ダンピング」「過剰広告」の実際
■歯科衛生士が行うインプラントメインテナンス
■90人ドクターアンケートに見る現状と課題

2朝日記事

健康寿命を延ばす噛める入れ歯

噛める入れ歯

人間誰でも「死ぬまで元気」が理想で、ピンピンコロリを目指しているわけですが、実態はそうなっていず、健康寿命と平均寿命の差は男性で9,22年、女性で12,77年だそうです。

介護が必要だったり、寝たきりになったりする期間が約10年もあるわけですから、本人のみならず、家族や社会保障、医療費の負担は相当なもので、しかも増え続ける。

先日のクローズアップ現代で見た医療現場の実態と合わせて考えると、正直暗くなってしまいます。
(「多死の時代」https://goo.gl/4yyyN)

しかし、歯科が力を発揮すれば、もっと健康寿命を延ばせると思います。よく噛めることは健康に直結します。自分の歯が多く残っているのは理想ですが、自分の歯が少なくても噛める入れ歯があれば健康度に歴然と差が現われます。

実際、噛める入れ歯にしたところ、寝たきりから自分で歩けるようになった例などたくさん報告されています。ある程度の年齢を過ぎたら、噛める入れ歯を手に入れることが、とても大切です。

歯科界も健康寿命を延ばす大きな力と責任がありますから、インプラントのダンピング合戦などをするよりも、噛める入れ歯を提供出来る歯科医と技工士を増やして、国民の健康に寄与すべきです。

「健康寿命は男性70・42歳、女性73・62歳 厚労省算出 平均寿命との差縮小目指す 社会保障負担軽減に期待」

急報!歯科インプラントホットライン無料相談

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インプラント治療でお困りの方は是非相談してみてください。

28日午前10時~午後5時。

電話03(6869)0428、または03(6869)9028