寝たきり高齢者が“使える入れ歯”にしたら歩けるようになった!健康寿命伸長&認知症予防のカギは歯

「人生100年時代」という言葉がよく使われるようになってきました。実際に日本人の平均寿命は伸び続けており、女性の平均寿命は84.17歳(2016年)となっています。

政府では、2007年に日本で生まれた子供については、107歳まで生きる確率が50%もあるとする研究結果などを踏まえて「人生100年時代構想会議」を立ち上げて、超長寿社会に対応できる政策のグランドデザインを検討しています(人生100年時代構想会議)。

この背景にあるのは、高齢者に使われる社会保障費の増大と、少子化による財源の縮小にほかなりません。

2017年の国民医療費は43兆710億円で、そのうち65歳以上の高齢者にかかった医療費は25兆9515億円と全体の60.3%を占めています。平均寿命が延びればそれだけ高齢者人口は増えるので、医療費もその分増加します。

 一方、出生率の低下で少子化は定着し、年金や医療費など社会保障費を負担する現役世代は一向に増えません。そこで、元気なお年寄りに働いてもらおうというのが、人生100年時代構想会議の本音です。

働くかどうかは別としても、高齢になっても健康でいたいというのは万人の願いです。しかし、下図で示すように平均寿命と健康寿命には男性が約9年、女性が約12年のギャップがあります。健康寿命とはWHO(世界保健機関)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間です。この「寝たきりや認知症など介護状態の期間」は、「不健康期間」とも呼ばれています。平均寿命は延びていますが不健康期間は縮まってはいないのが実情です。この不健康期間が、国民医療費の6割を使っている原因となっています。

「自分の口で食べる」ことが健康寿命の第一歩

歯も歯ぐきも老化します。個人差はありますが、年齢が上がるほど平均喪失歯は増えてゆきます(下図参照)。

しかし、歯は失っても入れ歯などで補うことが可能です。歯の老化は個人差が大きいので、比較的若いうちから歯を失ってしまう人もいれば、いくつになっても自分の歯が多いという人もいます。仮に歯を失ってしまっても、“使える入れ歯”を装着すれば、噛む能力に遜色はほとんどありません。

高齢になっても健康でいるための基本は、「自分の口で食べる」ことです。栄養補給だけならばほかの手段でも可能ですが、よく噛んで自分の口で食べる栄養摂取にはかないません。美味しいものを楽しく食べることは、精神的にも良い効果がありますし、なんといっても老後の大きな楽しみのひとつでもあります。

寝たきりだった93歳の高齢者が、入れ歯を入れて「自分の口で食べる」ようになったことで、栄養状態が改善されるとともに体力がつき、やがて歩けるようになり、介護認定も4から2になった例もあります。「自分の口で食べる」効果はとても大きいのです。

また、よく噛むことで脳が活性化され、認知症の予防になるとも報告されています。

筆者の歯科医院でも、重度のめまいで介護が必要だった80代の女性が、使える入れ歯に変えたところ、めまいが消失し、介護なしにひとりで出歩けるようになった例や、頭痛、偏頭痛、肩こり、手足の冷えなどの軽減、なかには薬を飲んでいても高かった血圧が正常範囲まで下がった人もいました。

いずれにしても、“使える入れ歯”を手に入れた人は食事へのストレスが減り、旅行に行けるようになったとか、集まりに出かけるようになったなど、生活自体が前向きで活動的になり、表情も明るくなります。「自分の口で食べる」ことは、間違いなく健康寿命の質の向上につながっています。

ただし、“使える入れ歯”を手に入れることは、大変難しい状況であるのも事実で、入れ歯治療に自信を持って取り組んでいる歯科医や歯科技工士は、残念ながら少数派です。

“使える入れ歯”を手に入れるポイントは、労力を惜しまず歯科医院を訪れ、よく説明を聞くこと。さらに、自ら入れ歯を使っている歯科医師ならば、より一層、患者さんの身になった治療を行っていることでしょう。

筆者自身、できるだけ自分の歯を残したいと思いつつも喪失歯があり、現在は部分入れ歯を使い何不自由なく自分の口で食べています。しかし、将来的には加齢とともに失う歯が増えるであろうことは、自然の摂理と受け入れています。

健康寿命を延ばすには、自分の歯を残すことも大切ですが、それ以上に失った歯を補う“使える入れ歯”でいつまでも「自分の口で食べる」ことが重要なのです。

(文=林晋哉/歯科医師)

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●林 晋哉(歯科医師)
1962年東京生まれ、88年日本大学歯学部卒業、勤務医を経て94年林歯科を開業(を併設)、2014年千代田区平河町に診療所を移転。「自分が受けたい歯科治療」を追求し実践しています。著書は『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、『歯医者の言いなりになるな! 正しい歯科治療とインプラントの危険性』(新書判) 、『歯科医は今日も、やりたい放題』(三五館)など多数。近著は『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」: -あなたもいつか歯を失う』(パブフル)。

林歯科HP:httpss://www.exajp.com/hayashi/


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歯医者あるある〜良い歯科医師のツボ・・

今年の歯科医師国家試験に合格し、晴れて歯科医師の仲間となった私の母校の新卒歯科医師達が林歯科を訪れて来ましたので良い歯科医師になるためのミニレクチャーをしました。
 

良い歯科医師のツボ・・

良い歯科医師になるためのツボは沢山あるのでしょうが、それは各自が経験を通して消化していくしかありません。私が新卒ドクター達に伝えたのは、各自が経験を通して正しく成長していくための心構えです。

①:患者さんは、嘘を言いに来ているわけではない。
患者さんは時に医学的にはあり得ない訴えをすることがあります。例えば神経のない歯が冷たい水でしみるなどといったものです。その時いきなりそんな事はあり得ませんと頭から否定してしまう歯科医師がいます。それは決してしてはいけません。

患者さんは嘘を言いに来ているのではありません。患者さんがそう感じているのを事実として、その上で様々な可能性に対して考察しその事象を突き止める。これを診察と言うのではないでしょうか。

②:患者さんが不快感や不安を感じない手触りを強く意識する。

患者さんは、基本的に歯医者には嫌々来ているので、少しでも治療行為にストレスを感じないようにするのは医療者としては当たり前であり、口の中に手を突っ込んでする仕事ですからこの手触りを意識するのは歯科医師として最も大事と言っても過言ではないと思います。

例えば、髪を切りに行ったときに乱暴な感じの手触りだとイラっとしますよね。でも、歯科医師としてのレクチャーではこのことについて言われたという話があまり聞こえてこないので、何でかなと思っていました。

③:色々な学説、理論はあるが、正解は患者さんから学ぶこと。
色々な説や素晴らしい薬品、材料と思えるものに出合いますが、すぐに鵜呑みにするのではなくしっかり自分で正しく取り扱い、その結果を患者さんから教えて頂くという姿勢が大事ということです。

インプラントメーカー主催の研修会に何度か参加したくらいで、うまくきちんとしたインプラント治療が出来る訳がないと思うのは私だけでしょうか。

歯医者あるある – ロケットニュース24

最後に、原田たかしさんという方がロケットニュース24に書かれた、患者から見た歯医者あるある30連発というものがありましたのでそれを引用、紹介させてもらいます。

基本的に患者さんはこのような感覚を持って来院されていることを肝に銘じて良い歯医者を目指し続けましょう。

ロケットニュース24 【歯医者あるある30連発】

1. 歯医者に行く足取りが重い

2. 待ち時間がとにかく恐怖

3. 診療室から「キュイーン」と聞こえるだけで心臓バクバク

4. 子供が泣いているとこっちまで泣きたくなる

5. 治療していると唇が乾燥しまくる

6. いまだに舌のベストポジションがどこなのかわからない

7. ていうか、目線もどうしたらいいのかわからない

8. とりあえず天井かライトを見ておく

9.「痛かったら教えてくださいね」が恐怖のはじまり

10. 痛くても手を上げずに我慢してしまう自分がいる

11. 意を決して上げる → 先生「もう少し我慢してね」→そんなぁ……

12. 溜まった唾液が吸引して欲しい時に限って放置プレイされる

13. やべっ、自分の唾液で窒息するかも……

14. 奥に溜まっている唾液を器用に移動させてなんとか呼吸する

15. 溜まりすぎてもうダメだ → 飲んじゃった

16. 吸引器で頬っぺたや舌まで吸われる

17. うがいの時間が唯一ホッとする時

18. 麻酔した場所から口にふくんだ水が出る

19. 治療時間がめちゃくちゃ短い時がある

20. そんな時は緊張した時間を返して欲しい

21. 何回行っても慣れない歯医者

22. もう行かないでもいっか……なんて考えが頭をよぎる

23. が、歯は大事なのでほったらかすよりも歯医者に行くことを選ぶ

24. 歯ブラシの使い方を教えてもらうと次からは気をつけようと心に決める

25. でも次第にやらなくなる

26. 雑な磨き方をしてまた虫歯

27. 何度でも歯医者に行く羽目になる

28. 久しぶりに行くとメチャ緊張する

29. 絶対に1回の治療で終わらない

30. どんな人気店よりも予約ができないのが歯医者


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「歯科技工士」がいる歯科医院といない歯科医院の実態・・

%e4%b8%80%e6%9c%ac%e7%be%a9%e6%ad%af%ef%bc%91歯科医院内で歯科技工士さんが技工をしている、いわゆる院内技工の歯科医院は全国でどれくらいあるのでしょうか?ネットで検索をしてみましたがよく分かりませんでした。

 私は卒業してすぐに兄が院内で歯科技工士をしていた診療所に勤め、その後一緒に開業しましたので、現在までほぼ院内に技工士さんが居ないという経験をしたことがありません。ほぼというのは、兄が入院した時に院外技工所を利用したり、手伝いに行った歯科医院が院内歯科技工ではなかったりしたからです。

兄は技工士学校を卒業後、院内技工のある歯科医院に勤め、そのドクターが勉強熱心だったこともり、保母先生やPKトーマス先生がおられた時代の国際デンタルアカデミー(IDA)で勉強しました。その後の咬合の勉強や解剖なども何年にもわたり全て一緒にやって来ました。その甲斐あって、今では診療に関して互いへの信頼は厚く、現在ではほとんどストレスのない補綴治療を行えるようになっています。

先日、部分義歯の破折で患者さんがいらっしゃいました。落として割れたとのことで、破折部がぴったりと合わさる状態でしたので、そのまま義歯を持って技工室に行って渡しただけです。

修理には30分程度掛かりましたが、その間、他の患者さんの診療をし、修理が終わったあと、今度はそれを患者さんに渡し、入れてもらい違和感がないことや多少のチェックで終了です。もちろん修理部位は修理したことが分からないくらいの仕上がりです。ドクターの修理ではこうは行きません。また、何と言っても患者さんが「林歯科はお兄さんが技工士ですぐに対応してくれるし、しっかりと直してくれるので本当に安心出来る」と言ってくれます。

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私も兄が技工士なのでかなり技工はやらされてきました。印象も常に2つ採らされて来ました。結構面倒くさかったけれども、そのおかげで現在では印象を見れば大丈夫かどうかは分かります。また、補綴物が患者さんに合わないとすぐに技工士のせいにするドクターが非常に多いのですが、模型に補綴物が戻るのならば、患者さんに合わないのはドクターの責任であることは身にしみています。

技工を正確なものとするのは、印象してすぐに石膏を注ぐ、石膏の混水比は正しく守る、石膏を硬化させるときは湿箱に必ず入れる、金属は熱処理をする。(金属は熱処理をしてはじめて金属特性をもつ補綴物となり、熱処理をしなければただの鋳物でしかない。)など極々基本的な守るべき事柄をおろそかにしないことが必須です。この上に技工技術や材料の吟味など他のたくさんの要素が関わってきます。

補綴物は、「人工臓器」です。こだわって携わるものです。しかしながら私の知っている限りでは、守るべき基本的事柄さえ守っていない歯科医師の何と多いことか。

いつも、院内に信頼に足る歯科技工士さんの居ない歯科医院は、どうやって診療しているのだろうと思ってしまいます。

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2つの取材依頼

いい歯医者 悪い歯医者 | 林晋也/林裕之 共著

昨日、取材依頼が立て続けに2つありました。ひとつは、ある地方のFM局からで、「歯科医」をテーマにした2時間の討論番組への電話出演の依頼です。担当者曰く、「先生のブログなどを拝見し、インプラントや成人の歯列矯正などに反対したり、いい歯医者や悪い歯医者に言及しています。

そうした歯科医は少ないので是非出演して頂きたい。」出演の時間などが調整できたので、快諾しました。放送日などは後日お知らせ致します。

もうひとつは、ある健康雑誌からで、こちらの特集テーマは「髪の毛」。

歯と髪の毛とどう関係あるのと思われるでしょうが、私の父が噛めない入れ歯で大きな円形脱毛症になってしまったのは、著書で何度か記載したので割と知られた逸話で、入れ歯を作り替え髪の毛が再び生えて来る様子は写真付きで解説してあります。こちらの取材は今日の夕方からあります。こちらも雑誌の発売日などは後日お知らせ致します。

取材自体そうそうあることではないのに、同じ日に2つもあった珍しい1日でした。

↓ いい歯医者 悪い歯医者 | 林晋也/林裕之 共著 (講談社プラスアルファ文庫)

インプラント治療の潮目

先日もルートの歯科材料を届けてくれる古くから知り合いのAさんが、こんな記事がありましたよと朝日の記事のコピーを見せてくれました。読売にも載っていたそうです。

『インプラント事故5年で300件 厚労省研究班調べ』朝日新聞(6/13付)。週刊文春にもインプラントの歯周炎の深刻さを取り上げた記事が載っていました。そして、インプラントに対して慎重な編集姿勢を取ってきた歯科の業界誌「アポロニア21」も5月号と6月号でインプラントの実際を特集しています。

その特集を組む理由に”テレビ報道などでインプラントに対する風当たりが強く”とか”インプラントバッシング”などの表現がありますが、何を的外れな認識かと呆れてしまいます。

今まで隠れていたインプラントのリスクや失敗例の多さ、その被害の深刻さが表面化したからこそ、消費者センターの警告やNHKや新聞、ラジオなどの報道で事態の深刻さを知らしめているだけの事。

それでも、インプラント医の本音などもあり、良心的な内容で時代の変化を感じさせる特集です。インプラント医は総じてかなり慎重に取り組んでいることも読み取れます。

インプラント治療には潮目が来ており、明らかに今までとは違った潮流になると思います。こうした変化はじわじわきてある日大きく動き出します。今がまさにその潮目です。

まあ、相変わらず「きちんとした診断さえしていれば失敗はない」などと豪語するインプラント妄信のオカシな歯医者もいますが、遠からず淘汰されると思います。

アポロニア21 (日本歯科新聞社)以下引用です。

昨今、テレビ報道などでインプラントに対する風当たりが強くなっています。これは日本だけの特殊事情ではなく、インプラント周囲炎の有病率の高さは国際的な問題となってきています。ただし、特に日本でインプラントバッシングのような状態が起きている背景には、患者さんに過剰な期待を抱かせたり、半ば強引に誘引したりするなど、これまで歯科医院側の対応に大きな問題があったと見られています。

本誌は、インプラントに対して慎重な編集姿勢を取ってきましたが、急速に社会に広がるインプラントバッシングが、歯科医療そのものへの不信感につながる可能性があると考え、あえて今後のインプラントがどのような方向を目指すべきなのかについて、2回に分けて特集することにしました。

2012年5月号
■12人の開業医に聞く「メリット・デメリット」「自院の対応」
■トラブル回避のためのリスク説明
■歯科医師免許を持つ弁護士からの提言

2012年6月号
■「医療事故」「ダンピング」「過剰広告」の実際
■歯科衛生士が行うインプラントメインテナンス
■90人ドクターアンケートに見る現状と課題

2朝日記事