長期間歯科を受診できないでいた方のケース

この方は、51歳(来院当時)の女性です。20年以上前に作った前歯の差し歯が、グラグラになっている状態で来院しました。

この方は、もともと歯の治療が怖くて、嫌で嫌でしかたなく。若い時から歯が痛くなっても我慢するだけ我慢して、どうしても我慢出来なくなったときだけ治療を受け、それも痛みが無くなると通院をやめてしまうということを繰り返して来ました。

歳を経るごとに口の中の状況は悪くなる一方で、常に、どうにかしなくてはとストレスを抱え、口の中に強いコンプレックスをずっと持って過ごしていました。

そんなことで、いつかはきちんと全体的に治療をしなくてはと思いつつも、たまにかかる歯科医は、ひと目口の中を見るなりに、「あー、ひどいなあー」という感じになり、詳しい説明もなく、歯を削ったり抜いたりされ、ますます歯科を受診する気持ちを萎えさせる経験をしてしまいました。

もともと歯科恐怖症のうえ、入れ歯には抵抗感が強くありました。

しかし、かといって自分の歯科恐怖症を考えるとインプラント治療はとてもではありませんが耐えられるはずがありません。このようにして迷い、悩んで数十年が経ってしまったのです。

そして私たちのところにはその数十年の思いと相当の決心をを持って来院していらしたのです。そこで、まずは、少しずつ治していくということ、通ってもらえれば必ず治療は終わる、ことを説明して納得してもらいました。

治療の第一歩は、治療台に座る練習から始まりました。というのもこの方は治療台にものの10分も座っていられないのです。本当に最初の数回は治療台にすわって話をするだけで終わるということもありました。

我々が一番大事にしたことは、その都度、何のためにどのようなことをするかを説明し納得して治療を受けてもらうということです。これを根気よく繰り返し、治療台にすわっていられる時間を徐々に増やしていきました。

最終的には一回の治療に小一時間は治療を続けられるようになりました。

このようにして、まずは練習用の義歯を作りました。奥歯で噛むという長年失っていた基本的な咀嚼システムの再獲得を計ったのです。そして、少しずつ残骸の抜歯や、ムシ歯や神経の処置、歯周処置を行い、いわゆる基礎工事をしながら口のなかの環境を整えていったのです。

拙著「歯医者の言いなりになるな!」角川oneテーマ21新書より抜粋


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