『保険だから報酬は入る』保険制度の重大な欠陥(3)

ではなぜ、入れ歯の保険点数が低いのか。これは行政が間違っているというよりは、歯科医の側に問題があるからだと言えます。使える入れ歯を作れる歯
科医が少ないから、保険点数が低くなっているのです。

現在のような状況で、一人の患者さんに対し、たとえば一ヵ月おきに新しい入れ歯を作るのを認めたら、医療費はすぐに限界を超えます。半年という区
切りが設けられているのは、いわば行政サイドの苦肉の策であるわけです。

しかし、半年という区切りを作っても医療費は減りません。逆に、
増える一方です。半年で新たに作れるなら、「長く使える入れ歯」を作る努力を放棄する歯科医が出てくるからです。使えない入れ歯を作られた患者さんは、ま
た新しい入れ歯を作らざるを得ませんから、雑な仕事をすればむしろ儲かるとも言えます。

現在とは別の病院で保険医をしていた頃、私は目の
前で患者さんに入れ歯を外されたことがあります。完成した入れ歯を患者さんの口に入れたところ、その患者さんは「こんなもの入れていられない」と、受付の
ところで入れ歯を外したのです。

なぜ外したのか。答えは単純で、合わない入れ歯だった。その頃の私は未熟で、合う入れ歯を作るための知識
も、技術もなかったのです。

入れ歯を外された私は、まず「なぜだろう」と思いました。手を抜いたわけではない。むしろ苦労して作った。そ
れなのに、合わないのはなぜなのか。そう思いました。

続いて考えたのは「まあいいや」ということです。「合っても合わなくても、保険だか
ら報酬は入る」というわけです。本当に恥ずかしく、患者さんに申し訳ない話ですが、それがかつての私でした。

林歯科


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