噛むだけではない命と直結

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林歯科のHPのリニューアルに伴い、掲載済みのコラムを読み返してみたところ、内容が色褪せていないのに我ながら驚くとともに、複雑な思いになりました。毎日新聞に2000年4月から12回に渡って連載したものです。12年の歳月が過ぎましたが、今でも新しい情報として充分通用します。

一般の読者向けに内容も分かりやすく書いたのですが、今でも歯科医や歯科技工士、歯科衛生士の皆さんが知らない事も多く載っています。旧態依然の歯科界に軽い絶望を覚えますが、今日から順次再掲載いたしますので、一般の方はもちろん不勉強な歯科界の人達もぜひお読み下さい。


歯と身体

虫歯が全くないという人は極めて稀です。あの耐え難い痛みは誰もが一度や二度は経験していることでしょう。歯医者での治療もドリルで削ったり、抜いたりとまた痛い思いをします。

一本でも歯を失うと食べ物が噛みづらくなったり、発音に支障がでたり、見た目が気になったりします。そうなりたくない為に、せっせと歯磨きに励んでいるのでが、残念ながら虫歯や歯周病を完全に予防する方法は確立されていません。

歯科医院が増え続けている事がそれを裏付けています。皆さんも心のどこかで歯がだめになったら歯医者に行って治してもらえばいいとの思いが強いのではな いのでしょうか。

そうした思いの裏には『どうせ歯は物を噛み砕くだけの道具なのだから』と言った歯そのものを軽く考える傾向があるようです。痛い思いはしたくはないが、壊れた道具(歯)は詰めるなり、入れ歯を入れるなり、修理をすればまた元のように噛める様になるはずだから、それで良いいった考え方です。虫歯や歯周病の予防が歯磨きがすべてと思うことと併せてこれが旧来の歯科常識と言えます。

しかし、ここ数年の間に各メディアを通じて、『噛み合わせが悪いと、頭痛、首すじや肩のコリ、腰痛、不眠、めまい、ボケ等』様々な症状が全身に現われることがあり、どうも歯は単に噛むためだけの道具だけではなさそうだと、少しづつ知られるようになってきました。

いわゆる『顎関節症』と言う病名も一般的になりつつあるようです。歯と身体を切り離さない歯科治療を実践している私の立場から言うと、噛み合わせと全身の関連は皆さんの予想を遥かに超えています。歯も身体の一部なのですから分けて捉える方が不自然なのです。

野性の動物の世界では歯を失う事は死を意味します。歯は命と直結しているのです。単に噛むためだけの道具などと軽く考えてはいけません。口の機能に不調和があれば内臓に不調和がある時と同じように全身に波及します。

口の健康なくして全身の健康はありえないのです。『歯も身体の一部である。けっして歯と身 体を切り離して捉えてはいけない』これが『新.歯科常識』なのです。