入れ歯の良し悪しを決めるもの

上顎であれ下顎であれ、床(粘膜と接する部分)はたわむ素材で作ります。ある程度の固さがあって、しかも弾性がある素材を使う。

これは、応力を逃すためです。床をまったく動かないようにガッチリ作ると、応力がどこにも逃げられず、入れ歯はかえって壊れやすくなります。原理としては、飛行機の翼がたわむのと同じです。飛行機の翼には巨大な圧力がかかりますが、弾性があってたわむために、空を飛んでも折れません。

また、床は透明なものを用います。私たちのところでは、原則として透明な床を使っています。

その理由は二つあって、一つは「問題があるポイントを目で確認できる」ということです。
たとえば、床が微妙に歪んでいて、どこか一点だけ当たりが強かったとします。そのとき、粘膜は圧を受けて白くなります。

これを発見するのが遅れると、粘膜がブヨブヨになってしまったり、骨が変形してしまったりするのですが、床が透明だと、当たりが強いところがすぐに発見できます。

床のその部分にサインペンなどで印をつけておけば、調整を加えなければならない範囲も、正確に把握できます。

部分入れ歯の形は千差万別

部分入れ歯についてまず言えるのは「形態には何十ものパターンがある」ということです。

一本だけ抜けた場合の小さな入れ歯から、一本だけ自分の歯があってそれ以外を補う大きな入れ歯まで抜けた本数、抜けた順番が人によって違うので、形態がさまざまに分かれるのです。

しかし、基本的な構造は同じです。部分入れ歯には床とツメがあって、床は粘膜に軽く接触し、吸いつき、ツメは隣り合う天然歯を抱えます。これによって上顎の入れ歯は落ちないし、下顎の入れ歯は浮きません。

部分入れ歯とは

ここでもう一度、部分入れ歯の形態についても簡単に触れておきたいと思います。

部分入れ歯とはどんな形をしていて、どうして落ちたり浮いたりしないのか――。このことを知っているのは、実際に使っている人か、歯科の関係者だけでしょう。

全部が自分の歯の人や、抜けた歯があってもブリッジで補っている人は、部分入れ歯の原理はおろか、形態も知らないのが普通です。

慣れるまでのストレスを最小限に

こまめに調整を続けることは、新しく入れ歯を作り直すときの準備でもあります。個人差があるので一概には言えませんが、入れ歯の耐用年数はおよそ10年といったところです。継ぎ足していく過程では、ケースによっては、新しく作り直すこともあるわけです。

どんなに注意深く作っても、新しく作るときにはいくつかのエラーが出ます。しかし、入れ歯を使いこなす咀嚼システムがいい状態にあれば、その調整にさしたる手間はかかりません。

同時に、慣れる苦労も少なくなります。新しい入れ歯を入れたときには、必ず違和感が出ますが、その違和感も小さくでき、慣れるまでのストレスを最小限にできるのです。。

入れ歯の調整で健康に

入れ歯の維持管理は、耐用年数を延ばすために行うものではありません。健康な生活を維持するためにも、こまめな調整が必要です。

咀嚼システムは、きわめて複雑なものです。その中核をなしているのが入れ歯です。ですから、入れ歯をきちんと調整していれば、咀嚼システムが安定します。

筋肉、顎関節、入れ歯の使い方などが、良い状態のまま維持される。これが健康な生活につながるのは言うまでもないでしょう。逆に、入れ歯が壊れてくれば、咀嚼システムが歪になって、歯のみならず全身に悪影響が及ぶ恐れが出てきます。