失敗の犠牲になったのは、私たちの父でした。

入れ歯について、私たちは大変な失敗を犯した経験があります。その失敗の犠牲になったのは、私たちの父でした。

父は65歳で総入れ歯になりましたが、その直前まで5本の歯が残っていました。残っていた歯をダメにしたのは、他ならぬ私たちです。私たちが作った「合わない入れ歯」によって、父は残っていた歯を失ってしまったのです。

それ以前の父は、さしたる不都合もなく入れ歯を使っていました。残っていたのはすべて下の前歯でしたから、上は総入れ歯、下は部分入れ歯という状態です。

私たちが、父の入れ歯を新しく作り替えたのは、親孝行をしようと思ったからです。技工士の兄と、歯科医の私で、もっといい入れ歯を入れてあげようと思ったのです。兄が技工士になって12年目、私が歯科医になって3年目のことでした。

それまでに蓄積した知識と技術を総動員して、私たちはがっちりと動かない入れ歯を作りました。満足のいく出来でした。父の口に入れたとき、「これで少しは親孝行ができた」とホッとしたのを覚えています。

入れ歯を入れたあと、父には2ヵ月に一度のペースで通院をしてもらいました。これは調整と管理のためです。入れ歯の本当の治療というのは、作ったときではなく、口に入れたときから始まるものですから、定期的なチェックを続けたのです。ところが…..。

「たかが入れ歯」と思っていれば、命も危ない

噛み合わせが狂うと全身に悪影響を与える場合があります。

頭痛や肩こりの原因が噛み合わせにあった!」などは今では誰もが知っているのですが、噛み合わせを狂わせる最大の原因が、ブリッジやインプラント、歯列矯正などの歯科治療にある事はあまり知られていません。

入れ歯の不具合で思わぬ症状に苦しむ場合もあります。その実例をこれから順次紹介していきたいと思います。

入れ歯への偏見を無くしたい!

入れ歯を使いこなすためには、トレーニングが必要です。慣れるまで、微調整を繰り返しながら使いつづけなければなりません。その最大の妨げになるのは、入れ歯への偏見です。入れ歯を受け入れる心を持たなければ、使いこなせるようにはなりません。

ところが現実には、どうやっても慣れることができない、欠陥のある入れ歯を作っている歯科医がいます。入れ歯を受け入れる心を持つためには、「歯医者はちゃんと使えるものを作ってくれる」という信頼が不可欠ですが、その信頼に値しない歯科医が少なくないのです。

しかし私はそれでも、「入れ歯」への偏見を捨てていただきたいと思います。というのは、どんなに腕のいい歯科医にかかっても、「合う入れ歯」「いい入れ歯」を手にするためには、まず「入れ歯」に対する偏見をなくすことが絶対に必要だと思うからです。

「入れ歯」に対する偏見がなくなったときこそ、歯医者も患者も同様に満足のいく「入れ歯」を実現できるのではないかと思うのです。

最大の理由は、歯医者の意識の低さ

このように、成功報酬システムの導入にはさまざまな効果が期待できるわけですが、もちろんそれは最終目的ではありません。入れ歯にまつわる諸問題を根本から解決するには、やはり歯科医自身が変わるしかありません。

学校で教えられている方法が間違っているのですから、きちんとした入れ歯を作れない歯科医や技工士が多いのは、仕方がないとも言えます。しかし、教えられた知識が間違っていることは、歯科医ならいつかは気づくはずです。入れ歯を作るたびに「合わない」と言われていれば、気づかないほうがおかしい。

教えられたとおりにやってうまくいかないのなら、教えられた方法を疑うのが当然です。そして、自分で正しい方法を探求しなければならない。歯科に限らず、医学はそのようにして進歩してきました。

しかし残念ながら、正しい方法を探究している歯科医は、けっして多くはありません。今ある方法が間違っているのではないかと感じている歯科医でも、「入れ歯はむずかしい」「入れ歯はカネにならない」と投げてしまうケースもよくあります。すでにお気づきだと思いますが、使えない入れ歯が多い最大の理由は、歯医者の意識の低さにあると思います。

唾液に成人病を防ぐ効果

咀嚼運動は唾液の分泌を促すものでもあります。

唾液にさまざまな成人病を防ぐ効果があるのは周知のとおりでしょう。たくさん噛んで、たくさん唾液を出していれば、病気になりにくい体になれるのです。

つまり、使える入れ歯がたくさん作られ、スムーズな咀嚼運動のできる人が増えれば、歯以外にかかっている医療費も減らせるわけです。