ブリッジの問題

ブリッジの問題に戻りましょう。ブリッジを求める患者と勧める歯科医が多いのはなぜなのか。

その理由は、大きくわけて二つあって、一つはブリッジの保険点数が入れ歯よりも高い、ということです。端的に言えば、儲かるから勧める。

もう一つは、健康な歯を削ることに疑問を持っていない、固定することが「いいと思っている歯医者がほとんどです。入れ歯を「嫌なもの」と考え、ブリッジを勧める歯科医もいます。入れ歯なんて面倒でむずかしい、多少のデメリットはあってもブリッジのほうがいい。

そう考えている歯科医がいる。しかしブリッジは、いつか必ず抜けます。土台となっている歯もいつか抜けるのですから、たとえば、ブリッジと一緒に2本の土台の歯を失ってしまえば、その人の口には歯3本分の空白が生じます。その新たな空白は、ブリッジでは補えません。

「歯の構成比」と4:2:1の食物バランス 

人間は雑食です。塩と水以外は命のあるものをいただきます。植物性、動物性何でも食べます。その食べ物をバランスよく摂るには、どんな割合で食べればいいのでしょうか?

その答えが「歯の構成比」に現れているというのは古くて新しい教えです。

歯の図

歯の数は上下の顎にそれぞれ14本 計28本あります。(親知らず/第3大臼歯は除きます。)

臼歯 (奥歯)   穀物や豆などをすりつぶすための歯  16本
切歯 (前歯)   野菜や海草をかみ切るための歯     8本
犬歯 (糸切り歯) 肉や魚などを食べるための歯      4本

上下の顎 で 計28本です。

この割合は、全ての人種にほぼ共通のものです。(親知らずがしっかり生えて臼歯が20本の場合もあります。)

この歯の構成比に食べ物を当てはめてみると、

主食 (臼歯)  炭水化物(穀類・豆類・芋類): 4
副食1(前歯)  野菜・海草類など: 2
副食2(犬歯)  肉・魚など: 1

4(炭水化物):2(野菜・海草類):1( 肉・魚)となります。

とても健康的な良いバランスだとは思いませんか?歯は食物を噛み砕き、消化酵素を多く含む唾液と良く混ぜ合わせる消化器の入り口でもあります。

歯の構成比と同じ食べ物を、良く噛んで食べるのが一番身体に合っているのだと思います。4:2:1の食物バランスを毎日の食事の参考にしてください。

前歯が飛び出していた

9年ほど前に来院した六一歳の女性も、そのケースです。この患者さんは左上の奥歯3本にブリッジに入っているほか、すべての歯が残っていました。残った歯の状態は良く、虫歯らしい虫歯もほとんどありませんでした。年齢からすれば、かなり丈夫な歯の持ち主です。

しかし、前歯が飛び出していた。一見してそれとわかるほど、前歯が飛び出しています。

話を伺ってみると、ブリッジを入れる以前は、前歯の飛び出しはなかったとのこと。その段階で考えられる可能性は、ブリッジの大きさが適正なものでない、ということです。大きすぎるブリッジを入れたために、歯列全体が圧迫され、前歯が押し出されてしまったわけです。

むろんこうなれば見た目が悪くなりますが、一番の問題は口の開閉に支障が出ていたことでした。話をするとき、あるいはものを食べるとき、飛び出した前歯が下唇に当たってしまい、激しい痛みが出ていたのです。当然、人と話をするのは苦痛になります。食事にも不都合が出ていて、豆腐や煮魚などやわらかいものばかり食べている、という話でした。

歯科医に不調を訴えたところ、その歯科医はブリッジの咬合面を削って調整をしたそうです。しかし、一時的には良くなるものの、しばらくするとまた元に戻ってしまう。何度やっても同じことのくり返しなので、とうとうその歯科医に見切りをつけ、私たちのところにやって来たわけです。

ブリッジ 3つの問題点

ブリッジ

「生まれて初めて永久歯が抜けました」

そんな患者さんが歯科医院を訪ねたとき、入れ歯を勧められるケースは稀です。そのかわり、たいていの歯科医はこんなことを言うはずです。

「ブリッジにしましょう」

ブリッジは義歯を固定するわけですから、取り外して手入れをする必要はありません。見た目にも目立ちにくく、ブリッジを入れていることを他人に悟られることはまずありません。加えて、「ブリッジを入れる」という治療には保険が適用されますから、入れ歯に偏見を持っている人なら、喜んで歯科医の勧めに従うのではないかと思います。

しかし、たいていのブリッジは、歯の寿命を縮めます。

通常、ブリッジを入れるときには抜けた歯の両隣りを一回り小さく削ります。次に、抜けたところに義歯を入れます。義歯の前後には歯冠の形をした「橋げた」がついていて、これを一回り小さく削った隣りの歯に被せ、固定するのです。写真を見ていただければ一目瞭然でしょう。橋を架けるようにして義歯を固定するからブリッジというわけです。

では、このどこが問題なのでしょうか。

第一の問題点は、健康な歯を大きく削ることです。ブリッジを入れるときには、健康な歯を最低2本も削らなければなりません。

しかし、抜けたのが1本なら、補うのは1本だけでいい。詳しくはのちほど説明しますが、隣りの歯を削らなくても、抜けた歯を補うことはできます。したがって、ブリッジにするときの様に歯をほとんど削る必要はありません。

第二の問題点は、噛み合わせバランスの変化が大きくなってしまうことです。すでに述べたとおり、たった一本の歯を削るだけでも、噛み合わせが変わり、さまざまなトラブルが生じる危険があります。一度に三本分の「治療」をすれば、その危険はさらに大きくなります。

第三の問題点は、ブリッジがダメになったとき、ほとんどがブリッジごと抜かなくてはならない状態だということです。つまり一ぺんに3本以上の歯を同時に失うはめになり、その時、否応でも、大きな変化を口が被ってしまうということです。

歯科医には遠慮する必要はありません

「こんな状態で、お恥ずかしいのですが・・」

初めて来院した患者さんに、そんなことを言われた経験が何度かあります。症状が進んでしまったことに対して、罪悪感のようなものを持っている人がいるのです。

 そんな患者さんに対して、私はこう言います。

「恥ずかしいことはありませんよ。ここは歯医者なのですから」

症状が進んだのは患者さんのせいではありません。たまたま、です。そして私は歯医者です。羞恥心、罪悪感といったものは是非とも捨てていただきたいと思います。

歯科医には遠慮する必要はありません。気を遣っていただけるのはありがたいことですが、「こんな状態を見せるのは恥ずかしい」とか「なるべく怒られないようにしなければ」などと考える必要はないのです。歯を治したいという気持ちがあるのなら、明日にでも歯科を訪ねてほしいと思います。信頼できる歯科医がいないのなら、明日から「歯医者探し」を始めてください。

歯周病や虫歯をいつまでも放置していれば、歯槽骨が溶けてしまうことがあります。なくなった歯槽骨は元に戻りません。そして、歯槽骨がなくなると合う入れ歯を作るのがむずかしくなります。

「これ以上症状が進んでいたら、どうなっていたかわからない・・・」 そんな患者さんに出会った経験は、実際に何度もあります。