抜歯したその日から普通に食事ができる

いざ抜歯する日が来て、患者さんがやって来たら、口から部分入れ歯を外します。外した部分入れ歯は、すぐに技工室に持っていきます。

診察室で歯を抜いている間、技工室では、予め用意しておいた入れ歯を使って「1本継ぎ足す作業」が行われます。継ぎ足した入れ歯は、抜歯した直後に口に入ります。その場で噛み合わせを調べて、必要な調整を全て行い、その日の治療はおしまいです。

帰宅した患者さんは、その日から普通に食事ができます。もちろん違和感は出ますし、「歯を抜いた」という痛みも残ります。しかし、入れたばかりの入れ歯でも、噛むことはでき、噛み合わせは保持されます。これによって、咀嚼システムへの影響を最小にできます。

抜歯の前に入れ歯を準備

「この歯は抜くのがベストだ」

そのような診断が下されたとき、私たちのところでは抜歯に先だって入れ歯を作ります。前もって入れ歯を作っておいて、抜いたその日に入れるのです。

たとえば、部分入れ歯を使っている人がいて、新たに1本抜くことになったとします。抜く予定の歯はグラグラになっていますから、これを一時的に固定して歯型を取り、技工作業の為の石膏模型を作ります。この模型上で抜くところに入れる1本分の義歯を予め作っておきます。

抜歯の後の準備

もちろん、歯は極力抜くべきではありません。不安定になりつつある歯があれば、まずはその原因を探って、「小さな治療」から始めるべきです。

仮に40歳の患者さんなら、その人の咀嚼システム、あるい口の中の秩序は、40年かけて築かれたものです。これをなるべく変えないようにするのは当然です。抜くのは最終手段です。

しかしその最終手段が、入れ歯を作るときとセットになることが多い。大切なのは「抜くのが正しい処置かどうか」「いつ抜くのがベストなのか」という診断と、「抜いたあとにどうするか」という準備が大切なのです。

抜歯のタイミング

グラグラになった歯が出てくれば、噛み方に偏りが出ます。左側に不安定な歯があれば、右側ばかりで噛むようになるわけです。これをいつまでも続けていると、咀嚼システムが崩壊してしまいます。

ですから、歯が不安定になってきたら、それを安定させなければなりません。原因が虫歯ならその治療を、原因が歯周病ならその治療をする。しかし、時として症状の進行が激しいために、「抜いたほうがいい」という診断が下されることがあります。

よくあるのが、末期の歯周病です。歯周病によって歯根膜が崩壊していれば、歯そのものに問題はなくても抜けるのは時間の問題です。そうなると、今度は歯茎を守ることのほうが大事になります。グラグラになった歯は歯茎にダメージを与えますから、時期を見て抜かなければならないなりません。

必要な抜歯、不必要な抜歯

「どのようにして継ぎ足していくか」という点について詳しく見ていきたいと思います。

まず申し上げたいのは、継ぎ足すときには抜歯をするケースがほとんど、ということです。二本義歯から三本義歯、三本義歯から四本義歯という移行をしていくとき、歯が自然に脱落するのを待つケースは、基本的にありません。たいていの場合、継ぎ足すのに先だって抜歯をします。

「まだ抜けていない歯を抜くのはおかしい」

そう思う人が少なからずいると思いますが、歯というのはある日突然スポッと抜けるものではありません。少しずつグラグラになっていって、動揺が限界に達したときに抜け落ちるのが普通です。