
インプラントの失敗と後遺症
インプラントの失敗は、単にインプラントが顎の骨にくっつかない(生着しない)というだけでなく、例え生着してもその過程や生着後に痛みや腫れ、しびれ、噛めないなどの後遺症が起こることが多く、最悪の場合死亡した例もある。
国民生活センターの概念(注1)に当てはめればインプラントはこうした危害が発生しやすいのである。
一般にインプラントの成功率はおよそ90%と喧伝されている。つまり、少なく見積もっても10%は失敗するのである。
その失敗の原因を医師の技量の成熟度に求めがちだが、実際の事例ではインプラントのオーソリティと呼ばれた大ベテランによる死亡事故も起きている。技量の差ばかりが失敗の原因とはいえない。
インプラントはいつ、どこで、誰がやっても危害が発生するリスクを内在しているのであり、その後遺症は重篤になりやすい。であるから、失敗した場合を前提に、全てのインプラントの治療記録を残し、客観的に検証可能なシステムを構築すべきだある。また、このシステムを実施する歯科医だけがインプラント治療ができるとする法を定めるべきである。
インプラント危害をなくすための提言
提言その1
インプラント治療をする場合の記録書式、記録模型の仕様の統一とそれらの保存の義務化。
(書式はソフト化し、セキュリティーの確立されたクラウド上に保存する。)
問診票(統一仕様)
治療前の口腔内写真
治療前の顔貌の写真
歯と全身の病歴書(統一仕様)特に血液凝固剤の服用歴など
パノラマレントゲン画像
CT画像
内科医による全身所見 高血圧、糖尿病、心臓疾患、腎臓病などの既往とコントロール
噛み締め、歯ぎしり、片噛みなど咬合状態の審査(統一仕様)
顎関節の状態の審査(統一仕様)
治療前の全顎模型(統一仕様)
診断書(統一仕様)
治療計画書(統一仕様)
治療費明細書(統一仕様)
危害発生時の保証書(統一仕様)
患者同意書(統一仕様)
親族同意書(統一仕様)
以上の複製を定型書式にまとめ、治療開始前に患者に必ず渡す。
提言その2
すべての診療記録(カルテ)は原則公開とする
提言その3
インプラント危害が起きた場合は、利害関係のない専門家の第三者機関による客観的な判定と早急な救済策の策定、その実施を行う。
*この機関の運営費用と危害を受けた患者救済のために医療費を保証するファンドを立ち上げる。
注1国民生活センターによる危害の概念
歯科インプラント治療に係る問題-身体的トラブルを中心に-
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20111222_2.html
(注)国民生活センターでは、全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち、商品・サービスや設備等によりけがをしたり体調不良や身体的なトラブルを申し出た事例を「危害」と分類している。”