本来のインプラント

インプラント治療が、ここまで「問題だらけ」なのは、それが本来の目的から外れたものだからです。本来、インプラントは顔面補綴の技術として発達したもので、入れ歯の代用品ではないのです。

顔面補綴というのは、事故や病気などで鼻や耳などが失われたとき、それを修復する治療のことです。たとえば、耳を失った人のケースなら、耳があった場所にマグネットを埋め込み、そこに金属で出来た「人工耳」を取り付けるわけです。

インプラントは、重篤な病気や事故などで顎を失ったときに、そこを補綴するためのものなのです。

インプラントによる感染症を防ぐ

なぜ「歯磨きの仕方」を細かく指導されるのか?

インプラントを入れた人は、歯科医から歯磨きの仕方を細かく指導されます。入れたあとの定期点検は、周囲の清掃、消毒がメインです。いずれも、感染症を防ぐのが目的です。

口の中には、毎日必ず食べ物が入ります。指や箸も入りますし、口と食器が触れたり、口を使って何かを切ることもよくあります。つまり、口という器官には常に雑菌が入ってくる。

ミクロの視点で見ると、インプラントと歯茎の結合部分には大きなすきまがあいています。雑菌は、そこからどんどん侵入してきます。これが感染症を引き起こすケースはよくあって、場合によっては顎骨に炎症が波及することもあります。ですから、インプラントを入れた人は、口の中の清潔を保つ努力をしなければなりません。

これは、清潔にしていれば大丈夫ということではありません。清潔にするのが最低条件ということです。歯と歯茎の境目というのは天然歯でさえも弱い部分で、歯肉炎や歯周病などはたいていそこに起こります。ですから、いくら消毒や歯磨きをしていても、感染症に冒される可能性はゼロになりません。感染症による歯茎の腫れ、炎症などが慢性的に起きるようになれば、むろん食事は苦痛になります。

また、顔面というのは、他の組織と違って筋膜の区切りがありません。歯茎が腫れてお岩さんのようになってしまう人を見かけることがありますが、これは顔に筋膜の区切りという防御フェンスがないからです。

つまり、顔面のどこかに炎症が起こると、比較的大きな範囲に拡がることが多い。こうした点から考えても、インプラントが生着したあとも安心はできません。

インプラント、最大の欠陥は「歯根膜がない」ということ

インプラントがブリッジの土台として使われることがあります。ブリッジには二本の「土台となる歯」がありますが、そのうちの一本をインプラントにするわけです。インプラントをする歯科医は天然歯とインプラントを繋げる事はない、といいますが、実際は違います。天然歯とインプラントを繋げるブルッジは今でも多く行われています。

天然歯の「土台」には歯根膜というクッションがありますから、ものを噛んだときはわずかに沈みます。しかし、インプラントの「土台」には歯根膜がないため、まったく動きません。これはいわばテコのようなもので、天然歯かインプラントのどちらか一方、あるいは双方が、いずれダメになります。

一つの構造体としてインプラントを見たとき、最大の欠陥は「歯根膜がない」ということです。したがって、インプラントがうまく生着したとしても、まったく安心はできません。

インプラントには歯根膜(クッション)がない

第三のインプラントの問題点は、インプラントには歯根膜がない、ということです。

天然歯には歯根膜というクッションがあります。歯根膜には、「歯と歯槽骨を繋ぐ」という役割のほかに、「ものを噛んだときの衝撃を吸収する」という、きわめて大切な役割があります。しかしインプラントには、衝撃を吸収するためのクッションがありません。

ものを噛んだときの衝撃が、ダイレクトに顎に届いてしまう。その結果、顎骨が障害を受け、吸収してしまうケースが出てきます。

歯根膜が無いと、口の中のバランスが狂います。口の中に、一本だけまったく動かない歯があるために、全体のバランスが狂ってしまうのです。

インプラントは「骨に刺さった棘」

第二のインプラントの問題は、生着しない恐れがある、ということです。簡単に言えば、きちんとくっつかない危険がある。インプラントに関するトラブルで一番多いのは、「ちゃんと付かなかった」ということです。

土台を骨に打ち込むのだから、簡単には落ちないのではないか――。そう思う人も多いかもしれません。しかし人工歯根は、人体にとって異物です。どんなに適合性のある素材を使ったところで、異物であることに変わりはない。

人体には、異物を排出する働きがあります。たとえば指に刺さった棘を放置しておくと、炎症が起こります。これは棘という異物を排出しようという免疫反応です。炎症によって皮膚が塞がれ、やがて棘が排出されるわけですが、同じことがインプラントにも起こるのです。ある生理学者は、インプラントを指して「骨に刺さった棘」と言っていますが、これはまさに正鵠を射た表現だと思います。