歯医者と技工士の大罪

NHK「おはよう日本」の特集

『11月8日は日本歯科医師会が設けた「いい歯(118)の日」。ほぼ寝たきりだった高齢者が入れ歯で噛み合わせを回復したことで栄養状態が改善、自分で歩けるようになったケースなどを通して、歯や口のケアの重要性を伝えます。』

ニュース映像では、入れ歯を入れて噛めるようになったお年寄りのヘモグロビンが増え酸素が全身に行き渡り、アルブミン数値も上がり栄養状態も向上、車いす生活から歩行器を使って歩けるようになった例などが紹介されていました。

このおばあさんは88歳で入れ歯を入れこんなに元気になったのですから、もっと若い時から使える入れ歯を歯医者に入れてもらっていたら、もっと元気に過ごせたはず。家族の負担はもちろん、医療費も大きく違ってくる。

歯医者ならだれでも入れ歯を提供出来てると思われるかもしれませんが、さにあらず、殆どの歯医者は入れ歯が苦手。使える入れ歯を提供出来る歯医者は数える程。だから、ニュースのようなお気の毒なお年寄りが多いのです。

高齢化社会は随分前からに始まっているのに入れ歯を入れていない人が多く、その結果多くの人に不自由な生活を強い、いらぬ医療費を増やし続けている。この責任を歯科界は負うべき。歯医者が使える入れ歯を提供できない現実がもう何十年も続いている。

このニュースの本当の見方は「入れ歯で健康回復」ではなく、「不自由な生活と膨大で無駄な医療費は歯医者の責任」が正解。

使える入れ歯を提供出来ない歯医者や技工士の罪は大きい。

NHKから電話取材がありました

NHKから電話取材がありました。

「高齢化社会が進むにつれ入れ歯の重要は増えるばかりですが、良い入れ歯が出来ていない実態があるようです。その原因に歯槽頂間線法則(しそうちょうかんせんほうそく)があると思いますが、どう思われますか?」

歯槽頂間線法則とは主に総入れ歯に人工の歯を並べる基準となる計測線のことで、どの歯科医も技工士も学校で習って卒業します。今回の電話はその専門用語から始まったので、少しびっくりしましたが、いいところに目を付けたなぁ。と思いつつ質問に答えて行きました。

この歯槽頂間線法則には致命的な欠陥があり、この法則で作った入れ歯ではその人本来の噛み合わせは再現不可能である。と拙著やブログで長年主張して来ましたので、まさに我が意を得たりの心境です。

どんな形でいつ報道されるのかは全く分かりませんが、この入れ歯問題が正しく伝わり、どの人にも良い入れ歯が提供されるようになる事を願って止みません。

放送が今から大変楽しみです。

歯槽頂間線法則については↓をどうぞ。

小さい入れ歯

「浮いた入れ歯でも何でも噛める」父の総入れ歯

51QAY32YSXL._SX230_  敬老の日を祝う為に今年85才の父の家を訪ねました。

ラム肉と特製ダレを持参しホットプレートでジンギスカン。父が育てたベランダ菜園の野菜を加え、さらに父が仕入れたNHK”ためしてガッテン”伝授の正しい紫蘇の葉の食べ方で、熱々のジンギスカンを蒔いて食べるとそりゃもう旨いのなんのって、久しぶりの父との楽しい時間を過ごしました。

その父は総入れ歯になって20年余り、合わない入れ歯で残っていた下の前歯をだめに、生半可な知識で作った入れ歯で脱毛症にしてしまい、勉強のためと云い つつ無理矢理0度臼歯の入れ歯を入れて辛い思いをさせ、まるで父を入れ歯の為の人体実験のようにしてしまった時期がありました。本当に父には申し訳ないこ とをしてしまいました。

しかし、耐えてくれた父のお陰で追求し続けた総入れ歯の在り方と、咬合と顎運動の真実を知る事ができました。本当に感謝しています。

父の総入れ歯は上はぴったりくっついていますが、下の入れ歯は下顎に乗ってるだけの状態です。それでも、夕べの食事のように大きいラム肉と野菜を紫蘇の葉で蒔いて口いっぱいに頬張ってもしっかり噛めるのです。

残念ながら、浮いた入れ歯でも何でも噛める。この奥深い事実を99%の歯医者も技工士も知りません。

父の入れ歯と脱毛症の関係の詳細は拙著「いい歯医者 悪い歯医者 (講談社プラスアルファ文庫)」に記してあります。

天使の入れ歯!?

ワックス製 尊体用義歯「エンゼルデンチャー」の存在をを友人から教えてもらいました。

エンゼルデンチャーHPの説明によると

「このたび、ご尊体用の総入れ歯を製作いたしました。この入れ歯は柔軟性と粘着性のあるワックス製で、指で簡単にあらゆる形に変形ができ、ほとんどの方の顎に装着することができます。上顎と下顎が別々ですので、どちらか片方を使うこともできますし、ハサミで簡単に加工できるため、部分的な使用も可能です。火葬後はすぐに溶け形も残りません。」

とあります。

20数年、総入れ歯だった叔父が肺がんで亡くなりました。入院生活の後半は人工呼吸器を付けていたので入れ歯は外したまま亡くなりました。人工呼吸器を外された叔父の顔は、入れ歯が入っていないので口がすぼみ余計に老けて見え、生前とは別人のようでした。

これでは可哀想だと冷たくなった叔父の口に上下の総入れ歯を戻しました。ところが、口が半開きで硬直が始まっており、ちょっとだらしなく見えます。

そこで、口を閉じた状態で下顎と頭をひもで結び保持したところ、スキンヘッドだった叔父の頭にくっきりヒモの後が残ってしまい親戚の叔母に叱られた事がありました。今では懐かしく思いだせますが、当時は悲しみにくれるなか叔父の為に必死だったのです。

こんな実体験からも「エンゼルデンチャー」に需要があるのは解ります。でも、このワックス製の入れ歯をアジャストするのは歯科医や技工士でも難しいだろうなぁと思います。

「エンゼルデンチャー」専門のおくりびとが必要になるかもしれません。

歯医者冥利、技工士冥利!!

「入れ歯?なんともないですよ」

インプラントで酷い目に会い転院してこられた患者さんが、

治療用の入れ歯を経て、上下の最終的な入れ歯を入れてから初めての診察での一言です。
「なんともないですよ」

歯医者冥利、技工士冥利に尽きる瞬間です。