インプラント治療の潮目

先日もルートの歯科材料を届けてくれる古くから知り合いのAさんが、こんな記事がありましたよと朝日の記事のコピーを見せてくれました。読売にも載っていたそうです。

『インプラント事故5年で300件 厚労省研究班調べ』朝日新聞(6/13付)。週刊文春にもインプラントの歯周炎の深刻さを取り上げた記事が載っていました。そして、インプラントに対して慎重な編集姿勢を取ってきた歯科の業界誌「アポロニア21」も5月号と6月号でインプラントの実際を特集しています。

その特集を組む理由に”テレビ報道などでインプラントに対する風当たりが強く”とか”インプラントバッシング”などの表現がありますが、何を的外れな認識かと呆れてしまいます。

今まで隠れていたインプラントのリスクや失敗例の多さ、その被害の深刻さが表面化したからこそ、消費者センターの警告やNHKや新聞、ラジオなどの報道で事態の深刻さを知らしめているだけの事。

それでも、インプラント医の本音などもあり、良心的な内容で時代の変化を感じさせる特集です。インプラント医は総じてかなり慎重に取り組んでいることも読み取れます。

インプラント治療には潮目が来ており、明らかに今までとは違った潮流になると思います。こうした変化はじわじわきてある日大きく動き出します。今がまさにその潮目です。

まあ、相変わらず「きちんとした診断さえしていれば失敗はない」などと豪語するインプラント妄信のオカシな歯医者もいますが、遠からず淘汰されると思います。

アポロニア21 (日本歯科新聞社)以下引用です。

昨今、テレビ報道などでインプラントに対する風当たりが強くなっています。これは日本だけの特殊事情ではなく、インプラント周囲炎の有病率の高さは国際的な問題となってきています。ただし、特に日本でインプラントバッシングのような状態が起きている背景には、患者さんに過剰な期待を抱かせたり、半ば強引に誘引したりするなど、これまで歯科医院側の対応に大きな問題があったと見られています。

本誌は、インプラントに対して慎重な編集姿勢を取ってきましたが、急速に社会に広がるインプラントバッシングが、歯科医療そのものへの不信感につながる可能性があると考え、あえて今後のインプラントがどのような方向を目指すべきなのかについて、2回に分けて特集することにしました。

2012年5月号
■12人の開業医に聞く「メリット・デメリット」「自院の対応」
■トラブル回避のためのリスク説明
■歯科医師免許を持つ弁護士からの提言

2012年6月号
■「医療事故」「ダンピング」「過剰広告」の実際
■歯科衛生士が行うインプラントメインテナンス
■90人ドクターアンケートに見る現状と課題

2朝日記事

「表面化したインプラントの実態」TBSラジオ

早朝のTBSラジオの『 森本毅郎・スタンバイ!』を昼間ポッドキャストで聞いているのですが、火曜日のコメンテーター酒井綱一郎さんのコーナーは「表面化したインプラントの実態」のタイトル。早速聞いてみました。

5/31のブログ『実態調査速報 インプラント
重篤トラブル400件余』でも取り上げた顎顔面補綴学会の報告を受けての内容でしたが、メインキャスターの森本さんも酒井さんもインプラントの経験者だそうで、いつにもまして、関心を示していました。

これを聞いて知った事なのですが、1年で60万本のインプラントが植えられているのだそうです。すると、インプラントの成功率は90%だとされていますから、残りの10%/にあたる6万本は失敗している事になる。「表面化したインプラントの実態」もうなずける内容でした。

今までと違ってインプラントの影の部分が広まるのは良い事なのですが、どうしても、失敗の原因を歯医者の腕の善し悪しに帰結しがちで、そこが歯痒く忸怩たる思いです。

使える入れ歯があればインプラントはまず必要ないのです。失敗してから気づいたのでは遅いのです。

酒井綱一郎さんのコーナーは「表面化したインプラントの実態」はここで聞けます。

実態調査速報 インプラント 重篤トラブル400件余

この調査は、インプラント治療を巡るトラブルが後を絶たないことを受けて”実施されたそうです。昨今はインプラントトラブルに関する警告や報道が頻繁になされていますが、医療者側からの報告は初めてではないでしょうか?

調査の速報を元にした記事ですが、この中に出てこない以下の文言が学会のサイトにありました。
https://www.jamfi.net/

対象症例 : インプラント手術関連の重篤な医療トラブル症例(ほとんどの症例は、他施設でのトラブルの後処置)」”記事になかったのは 『ほとんどの症例は、他施設でのトラブルの後処置』
とある部分です。

少々うがった見方かもしれませんが、インプラントの成功率を90%などと宣伝する実態はここにあると思います。

つまり、自分のやったインプラントが失敗しても、その患者さんは他の歯医者へ行ってその”後処理”をしてもらっているので、当の歯医者は自分のしたインプラントが失敗したことを知らずにいる。

自分のところへはうまくいった患者さんだけが通い続けるので、自ずと成功率が上がると錯覚するいう訳です。実際に、失敗したインプラントを抜くことを専門にしていたことのある友人の歯科医がいるくらいですから、そう外れた見方ではないと思います。

もう何度も言っていることですが、インプラントが増えれば、トラブルも増える。そもそもがハイリスクの治療法である上に、きちんとした入れ歯が出来ればまず必要ないものなのです。

最近インプラントに関する報道の方向がかなり変わってきていると感じます。それだけ被害の実情が表面化しているからです。誤解を恐れずに言えば、インプラントに警鐘をならし続けている我々にとっては追い風で、一般の方がインプラントに慎重になるのはとても良い事です。

今回の調査結果の詳細は7月に発表されるようですので、それを待ちたいと思います。インプラントのリスクを知る事があなたをトラブルから遠ざけます。

実態調査速報 インプラント 重篤トラブル400件余

こちらも参考にして下さい。

*インプラント治療が問いかける歯科医療の今 NHK生活情報ブログ (2月8日)

*歯科インプラント トラブル急増の理由 NHKクローズアップ現代 (1月18日)

*当ブログで取り上げたインプラント関連

 

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いいなり表紙 歯医者の言いなりになるな!

-正しい歯科治療とインプラントの危険性-

著者:林晋哉 林裕之

インプラント治療の欠陥とは!

角川oneテーマ21 (新書判)
¥760(税込)
発行元:角川書店 
ISBN 978-4-04-710261-3-C0295

内容: 週刊誌を賑わせたインプラントの死亡例。先端医療のずさんさが世間の注目を浴びることになったが、著者の林兄弟は以前より各メディアで激しく警鐘を鳴らしていた。満を持しての書き下ろし!

 

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入れ歯への偏見をなくしたい!

”mixiの過疎化が進んでいる” の記事をみて、そういえば全く使っていないなぁと思い、久しぶりにログインしてみました。

おそらく1年以上見ていないんじゃないかなぁ。話題になり始めたころ、娘に招待してくれと言って断られたことがありましたっけ。その後どうにか友人に招待してもらって、2006年にはじめてしばらくは毎日のように見ていましたが、今ではさっぱり。

今朝も”身売りか?”の記事がありました。IT業界も競争が激しいですね。盛者必衰ということでしょうか。

さて、mixiの自分のプロフィールを久しぶり読み返すと、気恥ずかしい記述も多々ありましたが、「入れ歯への偏見をなくしたい!」の思いだけは今でも全く変わりません。

でも、その思いが変わらないということは「入れ歯への偏見」は顕在です。入れ歯への偏見を利用したインプラントのセールスは激化し、その犠牲になる患者さんも増えるばかり。

入れ歯への偏見をなくすためにもっと頑張らねば!

顎のインプラント整形手術、米国で急増

顎のインプラント整形手術、米国で急増

アメリカの友人が「こんな記事見つけたよ」と知らせてくれました。

どうやら、抜けた歯の後に入れるインプラント(人工歯根)のことではなく、顎の形を変えるために埋め込む美容整形用のインプラントのことのようですが、この記事には大変興味深い記述が載っていました。

曰く
”ビデオチャット技術によって自分の顔を以前よりも目にする人が増え、顎のラインが自分で願っているほどシャープでないことに気付いた点もあるかもしれない。”

これは思い当たる事があります。私はビデオチャットはしませんが、MacのPhotoBoathやiphoneのカメラの誤操作で、意に反して自分の顔が写ってしまい、否応無しに普段の自分の顔を見せつけられ愕然とすることがあります。けれども、これがおのれの現実と受け入れ、顎にインプラントを入れる気にはなりません。

記事のまとめもいかにもアメリカっぽいなぁと思います。
曰く
”CEOは背が高く、魅力的で、ルックスが良い傾向があることは周知の事実。さらにそうした人々は顎の印象が強い傾向もある。そうしたことから、人は無意識のうちに、より強い顎ほど、権威や自信、信頼性などを連想するのです”

確かに歯列矯正がひとつのステータスになるお国柄ですが、”顎の印象に権威や信頼性を連想する”ってホントかよ!
とツッコミたくなります。

美醜はあくまで個人の価値観。これは古今東西万国共通のはず。ただし、忘れられがち。どのお国も美容整形がトレンドなのが心配です。決して良い事じゃありません。そのために泣いている人が沢山います。自戒も込めて中身で勝負!


目からウロコの歯の話