噛む機能を温存する治療法?!

 

放射線医学総合研究所(放医研)は1月31日、かむ動作を行うことで、注意に関する脳内ネットワークが賦活されることにより、認知課題の応答速度の改善が引き起こされていることが示唆されたと発表した。”噛む機能を温存する治療法?!かむ動作を行うことで注意力と判断速度が向上する – 放医研が確認 ]

これまでも噛む事の効用はさまざま報告されてきましたが、この研究報告は「注意に関する脳内ネットワーク」を解明したとされています。

第二次世界大戦で米軍のパイロットは眠気防止のためにガムを噛みました。ガムは軍事食だったのです。大リーグの選手もかなりの高率でガムを噛んでいます。リラックス効果や、やはり集中力が増すと言われて来ました。

日本でも幼稚園児を対象にしたよく噛ませる食事の実験で、IQが向上したとの報告があります。こうしたことから、学校でもガムを噛むことを積極的に取り入れてもいいのではないかと、自著で提言して来ました。

この記事で、注意力向上も目で見える形で示されたわけですが、別の意味で気になるのが下記の部分。

”かむ機能の重要性が示されたとともに、かむ機能を温存させる必要性が示されたと研究グループでは説明しており、例えば頭頸部のがんでは、手術によりかむ機能が温存できない場合があるが、今回の研究の観点からすれば、かむことのような機能を温存させる治療法が強く望まれるとしており、そうした意味では切らずに治すことが可能な重粒子線治療が、そうした機能を温存させる治療法として期待されるとしている。”

頭頸部の癌治療の現場で、噛む機能を温存するか否かの治療法をめぐる選択のせめぎ合いがあるようにも受け止められます。個人的には噛む機能を温存する治療を選択したいと思います。

先日の勘三郎さんの治療法をめぐ(https://goo.gl/rivPR)る近藤誠先生の見解などを考えても、自分の身に起きた場合にそなえて癌の治療法にはいろいろあることは知っておくべきだと改めて思いました。
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歯の治療で頭が悪くなる

かみ合わせをよくすることを「咬合是正」といいますが、これによって顎の位置を正すことで、体のバランスがよくなり、肩や首、腰のこりも解消されます。
ー中略ー
このとき同時に、脳、特に前頭前野への血流量が増えます。前頭前野はさまざまな知的能力の“センター”(司令塔)です。そのため咬合是正によって血流が増えると、前頭前野の働きがよくなります。ひとことでいえば、「頭がよくなる」のです。

ニコニコニュース(元記事は※女性セブン2013年1月10・17日号) https://news.nicovideo.jp

「かみ合わせを是正すると血流増え頭がよくなる」と脳科学者。『ホンマでっか!?TV』でも「噛み合なくなってしまった奥歯」お馴染みの脳科学者・澤口俊之氏が、顎の「かみ合わせ」の重要性を解説しています。

「頭がよくなる」という見解は初めて聞いた気がしますが、バランス良く噛めることが身体にとって良い事であることに異論はありません。ただ、噛み合わせの善し悪しを判定する共通の基準は現時点では存在しません。それぞれの歯科医が経験や独自の理論に従って調整しているのが実情です。

噛み合わせを悪くする大きな原因に歯科治療があげられます。矯正治療は歯を移動しますので、噛み合わせも変化します。見た目優先の矯正ですと、噛み合わせが二の次になってしまい、悪い噛み合わせになってしまい、様々な身体症状で苦しむ事になってしまいます。これは特に成人後の矯正治療で起こる場合が多いです。

インプラントも治療期間が長く、噛めるようになるまで2~3ヶ月要することがあり、その期間は噛める所でしか噛めない、偏った噛み合わせを強いられます。この状態はインプラントが成功し、噛めるようになったからからといって簡単に解消しません。

噛み合わせを良くする治療は難しいのですが、悪くするのは比較的簡単で、日常の治療に潜んでします。歯の治療で「頭が悪く」なることもままあるのです。

「噛み合なくなってしまった奥歯」

「噛み合なくなってしまった奥歯」

歯と身体を守る | 噛みしめない生活


意外に思われる方も多いのですが、大前提として「上下の歯は食事以外のときはふれていてはいけない。」を頭に入れてから今日の話題をお読み下さい。

デスクワークで食いしばり症候群? のニュース。

”「歯ぎしりは肩こりや頭痛を引き起こすことがあります。でもその原因が歯ぎしりだと思う人はめったにいません。気づいていない人は多いと思います」”

歯ぎしりは主に寝ている時にしています。噛みしめや食いしばりは起きている時もします。
”パソコンに向かって長時間デスクワークをするとき、無意識に食いしばっている方が見受けられます。”

食いしばりや噛みしめは歯や歯茎にダメージを与えるだけでなく、咀嚼筋や頭頚部の筋肉のコリなどの原因にもなります。こうした”無意識”にしてしまうクセは”意識して”治さなければなりません。ひとつの方法が写真のように目につくところにメモを貼っておくとです。メモを見るたびに食いしばっていないか、噛みしめていないか、を意識し、上下の歯が触れていれば離せばいいのです。「上下の歯は食事以外のときはふれていてはいけない。」のです。

例え辛いことがあっても、食いしばらず、噛みしめない生活が歯にも身体にも良いのです。

また、歯科治療の際、食いしばりや噛みしめの対策や予防を指導してくれる歯科医を選ぶことも、あなたの歯と身体を守る第一歩となります。

よろしければ、こちらも合わせてお読み下さい。” 悪癖「噛み締め」がよくわかる映画 「おくりびと 」”

割りばし法の凄い効果

2度のクリックで原文がお読みになれます。

割りばし法はそのネーミングのせいか軽く見られがちですが、実践された患者さんは驚く程の効果をあげています。(記事中に実例があります。)リラックス法としても優れていますし、簡単で安全な方法ですので、ぜひお試しを。

割りばし法で筋肉しかんさせる

食事や物を飲み込む時以外に、上下の歯が強く接触することは良いこと ではありません。

寝ている時にする歯ぎしりはもちろん、起きている時にも無意識に歯をくいしばったり、噛みしめたりする癖は、50kg以上の力が歯にかかるだけなく、顎の関節や口のまわりの筋肉にもダメージを与え、やがて全身に悪影響を及ぼすことも少なくありません。(一晩の歯ぎしりは一生の咀嚼に相当すると言われるほどです)

それぞれの癖の原因は、精神的なストレスや噛み合わせのアンバランス等が考えられますが、歯の寿命を延ばし、口のまわりの筋肉や全身の筋肉へのダメージを防ぐためにも、これらの悪い癖は意識的に治さなければなりません。その方法が割りばし法です。

まず割りばしを割って一本にします。その一本の割りばしを軽く唇で挟みます。決して噛んではいけません。『口にのせる』感覚です。これで歯と歯が接触しない状態になり、口のまわりの筋肉が緩みます。そのまま仰向けになり、全身の力を抜いていきます。全身の力を抜くのは意外に難しいですが、繰り返すうちにコツが掴めてくるはずです。

この体勢を30分以上続けます。注意点としては、蒲団やベットなどの柔らかいところではなく畳やカーペットなど、比較的固いところに仰向けになることと、体を冷やさない、急に起き上がらず、起き上がる時は充分体をほぐしゆっくり立ち上がって下さい。また、仰向けになった時背中や腰が痛い人はタオルなどを当てて下さい。膝を立てても構いません。

『割りばしを口に乗せ30分仰向けになる。』たったこれだけの方法ですが、多くの人が頭痛、肩こり、腰痛などが軽減または消失したりと顕著な効果を体験 しています。

それ以外にも、整形外科、脳神経科、内科、はては心療内科にまでかかっても7年間とれなかった左半身のしびれが殆ど無くなった人や、導眠剤を飲まなければ眠れなかった人が割りばしだけで眠れるようになったりしています。噛みしめや歯ぎしりなどの悪い癖は想像以上に全身に悪影響を与えているの
です。

割りばし法を毎日行うことで、それらの悪い癖を治し、口のまわりの筋肉はもちろん、全身の筋肉をリラックスさせましょう。たとえ顕著な効果がなくとも、一日一回全身の筋肉を緩めることで、心身のストレスを和らげることができます。副作用はありませんので、噛みしめや歯ぎしりの自覚が無い人もぜひ試して下さい。

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噛むのを忘れた子ども達


現在、林歯科のHP https://www.exajp.com/hayashi/ のリニューアルが進行中です。ウェブの制作・管理はアメリカの友人が一手に引き受けてくれています。

その新しいサイトに掲載する資料や写真を整理していたら、10年以上前の面白い資料が出て来ました。

週刊誌に載っていた電気釜の宣伝です。日本の歴史上の人物の食事を再現して、噛む回数の変遷が載っていました。

卑弥呼  4000回
源 頼朝  2654回
徳川家康 1465回
現代人  620回

噛むのを忘れた子ども達 170回 (例えばハンバーガー1個)

現代人もその子どもも、噛む回数が極端に少なくなっています。

しかし、この広告があった10年程前までは「噛まない子ども」「噛めない子ども」の増加を問題視して、学者の警告(ディスクレパンシー:歯と顎骨の不調和)や、噛む力が弱いと、永久歯の歯並びの乱れ、学力低下などにつながると、マスコミ報道なども相次いだのですが、最近はパッタリ聞かなくなってしまいました。

この資料が10年以上前ですから、今ではもっと噛まなくなっていると思います。

テレビのグルメ番組で「やわらか~い!=おいしい!」のように連発していますが、「やわらか~い」は食感のことで美味しさではありません。食品メーカーや外食産業はそれを逆手に取って、やわやかさに拍車をかけますので、益々噛めない人が増えてしまいます。

歯科医師側はもちろん、親、学校が一緒になって噛む回数を増やす事が、歯並びを良くし、学力、体力を向上させ、健康増進に結びつける対策に取り組むべき。と改めて思った次第です。