歯が抜け落ちる…歯周炎、「歯磨きで防げる」のまやかし、新事実浮上

第15回 歯が抜け落ちる…歯周炎、「歯磨きで防げる」のまやかし、新事実浮上

11月8日は「いい歯の日」でした。テレビニュースのトピックスなどでも紹介され、特に歯周病ケアに重点が置かれる内容が多く見受けられました。

歯周病は日本人成人の8割以上が罹患しており、世界中の疾患のなかでもっとも罹患率が高いといわれています。しかし、テレビ番組で紹介される歯周病ケアの内容は、相も変わらず「磨け、磨け」のオンパレードで、磨けば完全に歯周病を予防できるかのようなものでした。

歯周病は磨くだけでは治らない

歯周病は歯の周りの歯茎や骨がダメになって最終的には歯が抜けてしまう病気です。歯周病は「歯肉炎」と「歯周炎」に分けられ、この2つを合わせて歯周病と呼んでいます。大まかに、歯肉炎は歯茎や骨まで進まないもの、歯周炎は歯茎や骨まで進むものといえます。言い換えれば、歯肉炎では歯は抜けないが、歯周炎は歯が抜けてしまうものです。

歯肉炎も歯周炎も、歯に付着した汚れである「プラーク」(歯垢)に含まれる細菌が出す毒素による炎症が原因で起こるとされています。では、なぜ歯肉炎は歯茎や骨などの歯周組織を破壊せず、歯周炎になると破壊するのでしょうか。また、歯肉炎と歯周炎との境目はどうなっているのでしょうか。

これらは、長年臨床に携わってきたなかで、いつも疑問に思っていました。教科書的には、歯肉炎が進行し歯周炎となると説明されています。しかし、実際には、その説明と食い違う事象が見受けられます。

いくらブラッシング指導をしてもきちんと歯磨きをせず、歯と歯茎の境にプラークが常に存在し、歯肉のふちがいつも赤くなっている小学生などは臨床上よく見かけます。むしろ、このような子が普通といえます。ところが、子供では歯肉炎が年単位で長期にわたって存在しても、歯周組織が破壊されるに至ったという症例は、私が知る限りありません。

では、本当に歯肉炎が進行して歯周炎へと変遷するのでしょうか。私にはそうとは思えません。歯肉炎と歯周炎には明確な違いがあり、そこには何かが潜んでいるはずです。しかし現状では、歯肉炎と歯周炎との違いを「歯周組織が破壊され、再生しないものを歯周炎と呼ぶ」という以外に表せないのです。

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虫歯と歯周病の本当のところは?

晋哉#4先に書いた歯周炎に関する投稿を一般向けに書き直したものをすでにビジネスジャーナルの編集者に送ってあるのですが、やはり内容が伝わりづらいという判断なのでしょうか、12/2日現在掲載されていません。(11/21日再送信)

患者さんから見た歯周病

患者さんたちは、歯周病というとどのような認識を持っているのでしょうか? 歯肉炎と歯周炎は違うと言われてもピンとは来ないじゃないでしょうか。

でも、「この間、歯周病で歯を抜いた」という人の話は聞いたことがあると思うし、実際に経験した人もいるでしょう。

臨床上、歯周病は歯を失う最後の病態として最も多いものの一つであることは間違いありません。

自分の歯も歯周病で失いたくないし、歯科医師としても歯周病が原因で患者さんの歯を抜かなくてすむようになればこんなに幸せなことはありません。

でも現実には、いくら治療しても、いくら患者さんが頑張って歯を磨いても、歯を抜かなければならなくなる症例は少なくありません。
 
虫歯・歯周病への違和感

 歯科臨床に携わって満28年が経ちます。この間常々思って来たことは歯周病でも虫歯でも、「何で一本の歯だけなるのか?」ということです。口は一つの入れもので、プラークの中の細菌の出す酸や炎症誘発物質が原因なら、口の中のなぜ一本だけの歯が罹患するのでしょうか。

しかも、一本の歯の一部だけが虫歯で崩壊したり、歯肉の片側だけに炎症が起こったりするのでしょうか。付着するプラークの量が違うからなのでしょうか。

今日も数か月ぶりに来院されて、歯や歯茎との境に全体にべったりと汚れが目立つ患者さんがおられましたが、治療を必要する炎症像や虫歯はありませんでした。プラークの量という観点から言えば十分に治療の必要な所見があってしかるべしという状態です。

もちろん、様々な要因が絡んで物事は起こるのだということは分かっていますし、特に生命体の振る舞いは一筋縄では行かないでしょう。

ではなぜ、虫歯も歯周病も歯に付着するプラークの細菌が唯一と言っていいほどの原因とされ、これさえなければ虫歯も歯周病にもならないというようにされているのでしょうか。

それでもこれらの病気が撲滅に至らないのであれば、万人に当てはまる絶対に歯周病や虫歯にならない歯磨きが存在しないか、この前提がちがうのではないでしょうか。

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歯周炎 | 一般の方に分かりやすく手直し

periodontal disease

先週、ビジネスジャーナルという情報発信サイトの連載に寄稿した歯周炎に関するものに、多少の加筆、修正したものをこのブログに載せました。

そしてその寄稿文が編集されビジネスジャーナルに掲載されるのを待っていましたが、ビジネスジャーナルから内容が専門的過ぎて分かりづらく、このままでは掲載できないとのことでした。

読み返してみると、やはり一般の方には分かりづらいと判断されるのも仕方ないと思えましたので、再度書き換えて投稿しようと思います。

今回の歯周炎に関する投稿は、どうしても歯科医が多く読むであろうブログ村を意識したこともあって内容が専門的な方向へ傾いたのは否めないところです。

しかし、先週書いた歯周炎のブログの内容は歯科医の方達にはどう捉えられているのでしょうか?

私がこの歯周炎関連繊維芽細胞を知った時には大きな衝撃を受け、普段の臨床で歯周病に感じていた違和感や漠然としていた捉え方へ、はっきりとした道筋を感じたのですが。

炎症を伴わない歯肉退縮などの歯周組織破壊を日常の臨床上目にしていると思うのです。

例えば、乳歯から永久歯への萌え替わりの時に、乳歯の歯根吸収や乳歯の歯周組織の破壊が起こっている場面、また第一、第二大臼歯、親知らずなど萌え替わりではなく、新たに歯肉を破って萌出する場面では、細菌性の炎症によらない歯周組織の破壊が起こっています。

いわゆるアポトーシスのくくりでしょうか。

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実際、親知らずなどが萌出し始めている時のその現場に、歯周炎関連繊維芽細胞が発現していたりすると面白いのですが、歯周炎が完全にコントロール出来るようになることは、患者さんにも歯科界にとってもこれ以上ない福音です。

再三の紹介ですが、総説(日本語)「歯周炎薬物治療のパラダイムシフト」大島光宏先生、山口洋子先生著。 是非、ご一読下さい。

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歯周病 | ビジネスジャーナルに寄稿した原文章

以下は、私がコラムの連載を持っているビジネスジャーナルというウエブサイトに寄稿した原文章です。これを編集者が多少編集したものが掲載されます。今回は、内容的に歯科医師を始め、多くの方に知ってもらいたいので、多少修正、加筆したものをブログとして掲載させて頂きます。

磨くだけでは、治らない歯周炎

11月8日は、「いい歯の日」でした。テレビニュースのトピックスなどでも紹介され、特に歯周病ケアに重点が置かれる内容が多く見受けられました。

歯周病は日本人成人の8割以上が罹患しており、世界中の疾患のなかで最も罹患率が高くギネスの認定を受けるほどだ、という紹介もありました。しかし、その歯周病ケアの内容は、相も変わらず磨け、磨けのオンパレードで、磨けば歯周病を完全に予防や治療が出来るかのような、まったく進歩のないものでした。

歯肉炎と歯周炎の違い

歯周炎は、歯周組織を破壊し歯が抜けるに至る病気です。これまでは歯周組織を破壊しない歯肉炎が進行して歯周炎となり歯周組織を破壊するというもので、歯肉炎も歯周炎もプラークに含まれる細菌が出す毒素が原因の炎症という説明でした。しかしそれではなぜ歯肉炎は歯周組織を破壊せず、歯周炎となると破壊するのかが分かりません。

これには歯周組織を破壊する歯周炎となる前に、治療やブラッシングでの細菌のコントロールにより歯肉炎から歯周炎への進行を防いだから、という答えが返って来そうですが、後述する症例の様に細菌性の炎症の介在しない歯周組織の破壊としか考えられないものが多く存在することや歯周炎へと進行したものが徹底したプラークコントロールで炎症が消退しても歯周組織の破壊がおさまらず抜歯に至ることを避けられない症例がある、ということへの答えにはなっていません。

現状での歯肉炎と歯周炎との違いの本質は、「歯周組織が破壊され、再生しないものを歯周炎と言う」ということでしかないのです。

実際に、いくらブラッシング指導をしてもきちんと歯磨きをせず、歯と歯肉の境にプラークが常に存在し、歯肉のふちがいつも赤くなっている小学生などは臨床上よく見かけますし、このような子が普通のようなものです。しかし、子供では歯肉炎が年単位で長期に渡って存在しても歯周組織が破壊されるに至ったという症例は私が知る限り記憶にありません。 

では、本当に歯肉炎が歯周炎へと進行という名のもとに変遷するのでしょうか。私にはそうとは思えません。歯肉炎と歯周炎には明確な違いがあり、そこには何かが潜んでいるはずです。

歯周炎には細菌以外の原因がある

そこに以前本連載でも紹介しましたように、奥羽大学薬学部教授の大島光宏先生らの研究により、歯周炎には繊維芽細胞が関わっているという大きな糸口が示されました。(総説(日本語)「歯周炎薬物治療のパラダイムシフト」大島光宏先生、山口洋子先生著 https://doi.org/10.1254/fpj.141.314

そして研究はさらに進み、この度、英科学誌(サイエンティフィック・リポーツ)に、歯周炎の原因となる細胞を歯周炎関連線維芽細胞とし、この細胞が歯肉に遍在する繊維芽細胞と比し、骨を作るために必要な一部の遺伝子を欠いている特徴を解明することに成功したことが掲載されました。(論文紹介先(英文):https://www.nature.com/articles/srep33666

また、この歯周炎関連線維芽細胞の検出法を確立し国際特許を申請しました。これにより歯周炎関連線維芽細胞が存在しているかどうかを検査する事で、歯周炎を早い段階で発見できるようになる可能性が広がりました。この歯周炎関連線維芽細胞の遺伝子解析はSTAP細胞で一躍有名になった理研で「FANTOM5プロジェクト」として行なわれました。これについて大島先生から頂いたコメントを紹介します。

「この論文は、歯周炎原因細胞と考えられる歯周炎関連線維芽細胞には、(石灰化に必須である)Runx2という遺伝子の二つの転写開始点のうち、p1を使っていない(p1の上流のDLX5も)ことを明らかにしたものでした。またこの度の論文は、著者15名のうち歯科医師は私ひとりで7名が医師です。」

とのことです。つまり、歯周組織の不可逆的破壊が起こるのは、骨再生を担う遺伝子の欠けている歯周炎関連線維芽細胞の発現が原因と示唆される、ということです。

このように歯周炎には歯周炎関連線維芽細胞が大きく関与しているだろうということは、機会あるごとに周りの歯科医師たちには話しをしていますし、論文も出ているにも関わらず、歯科界では、ほとんどと言って良いほど広まっていませんしあまり話題として聞こえてきません。大島先生のコメントを見る限り、この話題は医師の方からのアプローチの方が早いのかもしれません。歯科医としては非常に残念です。

最後に私が見させてもらっている患者さんの症例を紹介します。初診が2001年ですから15年の経過です。左が2001年撮影のものです。右が2016年撮影のものです
 
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15年の間に上の前歯の歯肉が明らかに退縮しています。つまり歯周組織の破壊が起こったということです。この患者さんは欠かさず定期健診を含め、年に4回以上の受診をされています。しかしこの15年の間に上の前歯が腫れたりして、いわゆる歯周処置を行った記録はカルテにはありません。また、現時点右の写真でも治療を要する炎症像はありません。今まで臨床に携わって来て、いつも違和感のある現象でした。

しかし、歯周炎を細菌性の炎症のみが原因として捉えずに、歯周炎関連線維芽細胞のような歯周炎の原因細胞が存在すると考えるとかなり違和感がなくなります。

歯周炎の総括には、まだまだ、はっきりとしないことなどもありますが、これにはより多くの歯科医師や学会がこの歯周炎関連線維芽細胞と歯周炎の関連について関心を持ち、大規模な調査と研究を進めることが必要です。

そしてこれに最大限協力し、歯を失う最大の原因といわれている歯周炎の撲滅に寄与することが歯科医師としての道ではないでしょうか。

総説(日本語)「歯周炎薬物治療のパラダイムシフト」大島光宏先生、山口洋子先生著。https://doi.org/10.1254/fpj.141.314 是非、ご一読下さい。

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「歯科技工士」がいる歯科医院といない歯科医院の実態・・

%e4%b8%80%e6%9c%ac%e7%be%a9%e6%ad%af%ef%bc%91歯科医院内で歯科技工士さんが技工をしている、いわゆる院内技工の歯科医院は全国でどれくらいあるのでしょうか?ネットで検索をしてみましたがよく分かりませんでした。

 私は卒業してすぐに兄が院内で歯科技工士をしていた診療所に勤め、その後一緒に開業しましたので、現在までほぼ院内に技工士さんが居ないという経験をしたことがありません。ほぼというのは、兄が入院した時に院外技工所を利用したり、手伝いに行った歯科医院が院内歯科技工ではなかったりしたからです。

兄は技工士学校を卒業後、院内技工のある歯科医院に勤め、そのドクターが勉強熱心だったこともり、保母先生やPKトーマス先生がおられた時代の国際デンタルアカデミー(IDA)で勉強しました。その後の咬合の勉強や解剖なども何年にもわたり全て一緒にやって来ました。その甲斐あって、今では診療に関して互いへの信頼は厚く、現在ではほとんどストレスのない補綴治療を行えるようになっています。

先日、部分義歯の破折で患者さんがいらっしゃいました。落として割れたとのことで、破折部がぴったりと合わさる状態でしたので、そのまま義歯を持って技工室に行って渡しただけです。

修理には30分程度掛かりましたが、その間、他の患者さんの診療をし、修理が終わったあと、今度はそれを患者さんに渡し、入れてもらい違和感がないことや多少のチェックで終了です。もちろん修理部位は修理したことが分からないくらいの仕上がりです。ドクターの修理ではこうは行きません。また、何と言っても患者さんが「林歯科はお兄さんが技工士ですぐに対応してくれるし、しっかりと直してくれるので本当に安心出来る」と言ってくれます。

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私も兄が技工士なのでかなり技工はやらされてきました。印象も常に2つ採らされて来ました。結構面倒くさかったけれども、そのおかげで現在では印象を見れば大丈夫かどうかは分かります。また、補綴物が患者さんに合わないとすぐに技工士のせいにするドクターが非常に多いのですが、模型に補綴物が戻るのならば、患者さんに合わないのはドクターの責任であることは身にしみています。

技工を正確なものとするのは、印象してすぐに石膏を注ぐ、石膏の混水比は正しく守る、石膏を硬化させるときは湿箱に必ず入れる、金属は熱処理をする。(金属は熱処理をしてはじめて金属特性をもつ補綴物となり、熱処理をしなければただの鋳物でしかない。)など極々基本的な守るべき事柄をおろそかにしないことが必須です。この上に技工技術や材料の吟味など他のたくさんの要素が関わってきます。

補綴物は、「人工臓器」です。こだわって携わるものです。しかしながら私の知っている限りでは、守るべき基本的事柄さえ守っていない歯科医師の何と多いことか。

いつも、院内に信頼に足る歯科技工士さんの居ない歯科医院は、どうやって診療しているのだろうと思ってしまいます。

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