誰も気づかなかった 噛む効用―咀嚼のサイエンス

噛む効用

誰も気づかなかった 噛む効用―咀嚼のサイエンス
窪田 金次郎 (監修), 日本咀嚼学会 (編集)

14年前の1997年発行です。

噛むことは、こんなに身体にいい!
脳の働きを活発にし、がんや糖尿病などの成人病を防ぎ、肩こり・腰痛を治し、スポーツ能力を高め、寝たきり老人を立ち上がらせ、ボケを予防する驚異の生命システム「咀嚼」。

その謎に迫る!日本初の一般向け「咀嚼の科学」。歯科医学をはじめ、生理学・解剖学・食品栄養学・保健学等の、各研究機関の最前線で活躍する26名の専門家を結集。日本咀嚼学会が、世に問う記念碑的一冊。

先日のNHKためしてガッテンもそうでしたが、「噛む効用」は国民の健康に役立ち、医療費の削減効果も大きいのですから、歯科界あげて取り組み、アピールするべきだと改めて思うのです。

噛み合わせと全身状態は連動している

噛むという行為は、体全体の状態と連動しています。

人間は、2足歩行のために、頭を常に安定させなければなりません。重い頭を支えるため、太くて強靭な筋肉が首の周りから背中にかけてついています。

これらの筋肉を適度に緊張させることで身体のバランスを保っています。しかし、筋肉の緊張のしすぎが長く続くと、筋肉のなかを通っている血管や神経を圧迫し血行不良や神経伝達を阻害して、こりや痛み、しびれなどの症状を全身に引き起こします。

物を食べるときに使う咀嚼筋は、この頭を支える筋肉と隣り合って密接な関係にあり、一体となって動いています。したがって、咀嚼筋の不調和が全身の筋肉バランスを崩し、身体の姿勢に悪影響を及ぼすこともあるのです。

転院のススメ?!

遠くに赴任した友人が、通い始めた歯医者に不満があると電話してきました。「とてもよく診てくれるのだが、どうもしっくりこない、そこに通うのがストレスになる。」と言うのです。(その他にも治療上の細かい話もありましたが、ここでは割愛します)

そして、「転院も考えるのだが、その歯医者に悪い」とも言うのです。しかし、自分の歯のことです。歯医者に気兼ねする必要はありません。嫌々通うのはストレスになるだけです。

誤解を怖れずに言いますが、実は、転院は患者さんが考える程歯科医側は気にしていません。もちろん非常に残念に思いますが、結局「仕方ないなぁ」と受け止めています。無理やり治療するわけにもいきません。

診療を進めるには歯科医との「相性」も大切な要素です。歯科医の技量は外からは分りづらいものですが、歯科医との相性の良さは感じることで判断がつきます。歯科医選びの目安にするのは決して悪い事ではありません。

「すぐ慣れます」は危険信号

歯に詰め物や被せ物をしたことのある人なら誰でも、何かしらの違和感を覚えたことがあるのではないでしょうか?

「ちょっと高いな」とか、「ちょっときついな」あるいは「低くて噛み合った感じがしない」などの違和感。そしてその事を歯科医に訴えると、「大丈夫すぐ慣れますよ。」と決まり文句が返ってきます。

この決まり文句がくせ者なのです。

実際、初めのうちこそ、「なんか変だな」という感じだったのが、何日か経つうちに違和感を感じなくなってしまうことが多く、これを称して「慣れた」というわけです。

しかしこれは、違和感のある噛み合わせに、咀嚼システムが順応し変化した事を意味します。。この無理矢理の変化が歯や顎、身体に良い訳がありません。

特に噛み合わせの調整を診療台に寝たままの姿勢で行うと、違和感が出やすいのです。寝た姿勢と起きた姿勢では、顎の位置が微妙に違います。

この微妙な違いを是正しないまま「すぐ慣れます」は身体にとって危険信号なのです。逆に言うと、詰め物や被せ物、入れ歯など噛み合わせの調整を必ず起きた姿勢でチェックするのが、噛み合わせの怖さを解っている歯医者です。

スポーツ選手と歯

↓↓土佐礼子選手 27日の東京マラソンを欠場 右脚痛のため

https://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/tokyo_marathon/?1297852159

とのニュースがありました。

彼女は数年前に歯列矯正をしています。歯並びを良くする為だけでなく、専門家のアドバイスで身体のバランスを良くし、記録を伸ばす為です。

そんな彼女の歯並び事情と、我々の見解が、成人の歯列矯正の是非を問う紙面(「歯の矯正 大人も必要?」 2007年10月12日朝日新聞朝刊)に載ったことがあります。

成人の歯列矯正をした彼女は身体のバランスが良くなり、記録も伸びて歯列矯正を是としました。

私達はそれは危ないなぁーきっと怪我をすると思っていました。担当の記者(小島泰生さん/朝日新聞西部本社記者:当時)にもそう断言していました。「成人の歯列矯正百害あって一利無し」の見出しで同じ紙面に我々の見解が載っています。彼女がオリンピックで途中棄権する前の話です。

当時の取材記者には他のスポーツ選手の例も挙げて説明しました。成人後の歯列矯正は選手寿命を縮めることが多い。と。

美容目的で矯正したり、白い歯に変える為に大きく歯をいじったり、変なマウスピースを入れたりした場合、よくも悪くも身体に影響を与えます。スポーツ選手の場合は大きな怪我をして選手寿命を縮めていることが多いのです。(詳しくは「歯列矯正の副作用」をご参照ください)

歯は安易にいじってはいけない!スポーツ選手だけでなく、誰にでも当てはまるいつも変わらぬ見解です。

今年も黄色いマウスピースをして絶好調の選手がいますが、とても心配です。