よく噛んで食べる

私たちの毎日の生活の基本の「キ」は食べ物をよく噛んで食べることです。よく噛んで食べればエネルギの補給も十分にでき、栄養も効率よくとれて健康になります。

脳梗塞を起こして寝たきりになった人が、胃に直接流し込む流動食だったのを、口から食べる食事に切り替えたところ、立って歩けるまでに回復したという報告があります。

また認知症の人がよく噛んで食べる食事をするようになると症状が改善した、という報告もあります。

よく噛むこと、噛めることが私たちの命と直結しているからこそ、このようなことが起きるのです。「よく噛んで食べなさい」という、親から子への愛情を込めた教えはその人の生涯を通じた大切な約束事でもあるのです。

毎日の積み重ねから

噛むことは口や歯や舌、そして顎や顎関節を使って行うきわめて複雑な運動です。

噛むことに関係する働きを専門的には咀嚼システム(噛むシステム)と呼んでいます。ふだん何気なく行っている噛む行為ですが、システムと呼ぶのにふさわしい複雑な働きをしているからにほかなりません。

噛むシステムは伺年も何十年も毎日繰り返されることで、さまざまな情報が積み重ねられていき、その人の噛むシステムができあがっていきます。

お米を食べる日本人にふさわしい噛むシステムもこのようにして作られるのです。よく噛まないで育った子どもやよく噛まない食事をしている大人は、よく噛まない(噛めない)システムになってしまいます。

噛むシステムの中でも要となる働きをするのが歯です。バランスのいい噛み合わせの大切さがおわかりいただけると思います。

「崩す原因」を見つける!

噛み合わせバランスが狂う大きな原因は、第1章で述べたように噛み合わせパランスに注意を払わない歯の治療が行われていることです。

そんな治療が行われるのに対しては患者としてダメ出しをする必要、があるのです。第l章で述べた注意点を左ぺlジに整理しておきました。

また、自分に問題、があるかどうかは次のチェックをして、問題があれば、早速改善しましょう。

1)歯を失ったままで放っておかない。
2)食事でやわらかいものばかり食べない。
3)外力が加わること(横向き寝、うつぶせ寝、頬杖、ペンなどの噛み癖、スポーツや交通事故などによる顎の強打)を避ける。
4)噛み癖(同じ側ばかりで噛む)を直し、左右の歯でバランスよく食べる。
5)歯の噛みしめや、歯ぎしりの癖があれば直す。

唾を飲み込んでみましょう

唾を飲み込んでみましょう。飲み込むときに上の歯と下の歯が全部ピタリと触れ合っているととがわかるでしょうか。

私たちが食べ物や飲み物を飲み込むたびに上の歯と下の歯が触れ合うことで、歯がこの位置にありますという情報が脳に伝えうれ、脳はその情報をもとに噛むシステムをコントロールします。

今度は口を聞けたあとで閉めてみましょう。口を開けるときは下顎だけが動いずがいこっ
ていることがわかるでしょうか。上顎は頭蓋骨の一部なので動くのは下顎だけなのです。

口を閉めたときに下顎とともに下の歯が必ずきちんと同じ位置に戻ってくるでしょうか。下の歯が同じ位置に戻ることがとても大事なことなのです。

噛み合わせバランスが悪いという状態は上と下の歯がピタリと触れ合わす、下顎が同じ位置に戻ってこない状態です。その結果、脳は間違い情報をもとに噛むシステムや体の動きをコントロールし、さまざまな不調を招くことになります。

ワイヤーを使わずに顎を広げる矯正法

私は成長期の子どもたちの歯列矯正の方法として「顎を広げる矯正法」を行っています。

この方法はベンチに5人が座って窮屈な状態なのを大きなベンチに替えてゆったりと座れるようにすることに似ています。といっても外科的な処置をして顎を広げるわけではありません。

自然に顎が広がるように顎の成長を促す方法なのです。この矯正法は。

1) 上顎を大きくする
2) 下顎を大きくする
3) 上下それぞれの歯列と噛み合わせを調節する、という3つを並行して行います。

顎を広げる器具は入れ歯に似ており、自分で取り外すことができます。プラスチックと金属でできている器具の中央にはスプリングとネジがあり、ネジを締めると、内から外へ、つまり顎を広げる方向に力が働くしくみです。

これを2週間に1度くういのペースで調整し、約2年をかけて顎を大きく育て、かっ、噛み合わせを育成していくのです。