噛みしめと歯ぎしり

遅かれ早かれ、「噛みしめ」が噛み合わせバランスを崩す大きな問題として注目されてくると思います。

噛みしめは文字どおり歯を噛みしめることです。噛み合わせば上と下の歯がピッタリ合った状態ですが、歯と歯が合うことで、それ以上の力が加わらないしくみが噛むシステムには備わっています。ところが、さらに強く噛み合わせの力を加えてしまうのが噛みしめです。歯ぎしりも噛みしめの仲間です。

噛みしめや歯ぎしりを改善しないでいると歯や歯茎を痛めて、噛み合わせパランスが狂う原因となります。入れ歯をしている場合は、夕方になると歯茎に灼熱感を覚え、入れ歯を外さずにはいられない、というととになります。

多くの人は無意識のうちに睡眠中に多少の噛みしめをしていますが、昼間に噛みしめを自覚するようになると対策が必要になります。

チューインガムのすすめ

やわらかい食べ物が大好きな「噛まない生活」を続けていれば、近い将来、まともに噛むことができない日本人ばかりとなってしまうことでしょう。

歯の健康は国の未来を左右するといってもいいすぎではないと思います。

チューインガムを人前で噛むととに抵抗を覚える人もいるようですが、私はガムを積極的に活用するべきだと考えています。大人も子どももガム(ノンシュガーのもの)を積極的に活用して「噛む生活」を実行したいものです。

子どもたちが必ず噛まなければいけない時聞を作ることも一つの方法ではないかと思います。「顎の時間」を設けて、保育園、幼稚園、小・中学校などで1日10分でもスルメや硬めのガムを噛むようにしたいものです。

ガムを噛むときは口を閉じ、左側で数回、右側で数回というように、左右の歯でバランスよく噛むようにしましょう。

心の不調も改善する特効薬

「顔に出てしまう」といわれるように、顔は心の状態を映す鏡にたとえることができます。ストレスや不安にさいなまれると気持ちが沈み、心も体もこわばってしまいます。

体のこわばりは顔の表情を演出する表情筋という筋肉までこわばらせ、精彩を欠いた表情となるのです。

じつは顔の表情筋と噛むシステムの筋肉(咀嚼筋)は1枚の筋膜を隔てるだけのお隣同士の筋肉です。よく噛んで表情筋をよく働かせると、それにつれて顔の表情筋もよく動いて生き生きとしてきます。

表情筋のこわばりがとれて顔の表情が豊かになるにつれて、心のこわばりもほぐれていくことでしょう。顔や肌の色つやもよくなり、自も輝きを増します。

心の不調を招くストレスや不安は、噛み合わせバランスを狂わせる「噛みしめ」の原因ともなります。心と噛むととの密接な関係がわかります。

脳の血液の流れ

心臓は1分間に60〜80回の収縮を繰り返して体のすみすみまで血液を送り届けています。血液が全身をまわって心臓に戻ってくることを血液循環と呼んでいますが、血液循環をよくする心臓の手助けとなる働きのことを「第二の心臓」と呼ぶことがあります。

「第二の心臓」といえば、脚のふくうはぎの働きが知られていますが、噛むことも「第二の心臓」と呼ぶのにふさわしい働きをします。

よく噛むことは脳の血液の流れをよくします。噛むと下顎にあるポンプの役目をする場所(下顎頭の少し上にある静脈叢)がよく働いて、脳に血液がよく送られるようになるからです。

よく噛むことで学習する能力が向上したという、ラットを使った実験も報告されていますし、よく噛むことで視力もよくなるという報告もあり、注目されています

よく噛んで食べる

私たちの毎日の生活の基本の「キ」は食べ物をよく噛んで食べることです。よく噛んで食べればエネルギの補給も十分にでき、栄養も効率よくとれて健康になります。

脳梗塞を起こして寝たきりになった人が、胃に直接流し込む流動食だったのを、口から食べる食事に切り替えたところ、立って歩けるまでに回復したという報告があります。

また認知症の人がよく噛んで食べる食事をするようになると症状が改善した、という報告もあります。

よく噛むこと、噛めることが私たちの命と直結しているからこそ、このようなことが起きるのです。「よく噛んで食べなさい」という、親から子への愛情を込めた教えはその人の生涯を通じた大切な約束事でもあるのです。